国際税務に強い会計事務所とは?(外資系企業・海外進出支援・移転価格)

会計事務所には様々な形態があり、それぞれで特徴が異なりますが、本ページでは国際税務に強い会計事務所の特徴について解説します。

その他の分類はこちら→生き残る税理士や会計事務所はこれだ!会計事務所の種類・分類・戦略を徹底解説!

国際税務に強い会計事務所とは?

概要

国際税務に強い会計事務所とは、海外との取引に関する税務や海外進出支援外資系企業の税務などを専門とする会計事務所のことです。

国際税務には、インバウンド(海外から日本への進出)とアウトバウンド(日本から海外への進出)の2種類がありますが、国際税務に強い会計事務所もその2つに分類されます。

サービスの特徴

●インバウンドに強い会計事務所/外資系企業に強い会計事務所

インバウンドに強い会計事務所とは、主に、外資系企業に強い会計事務所のことを指します。(以下、「外資系企業に強い会計事務所」と呼びます。)

外資系企業に強い会計事務所は、海外の企業の日本法人の税務や会計を専門に扱っており、また、税務会計と合わせてペイロール(給与計算)などのサービスも提供していることが一般的です。

特徴としては、比較的小規模な外資系企業のバックオフィス業務をアウトソースで受託することが多く、記帳代行から月次・年次決算、税務申告書の作成、給与計算、また外資系企業が本国の親会社に定期的に提出するレポーティング資料の作成などを行います。

外資系企業に強い会計事務所の業務では、英語を使うことも多く、記帳を「ブッククキーピング」、略して「ブック」、給与計算を「ペイロール」など、横文字を利用することがあります。

また、個人の所得税の確定申告も行っていますが、海外から日本に赴任している外国人役員などの確定申告を行うことも多いため、通常の会計事務所で行っている確定申告だけでなく、非居住者の確定申告を取り扱うことも多く、時に、外国人役員のストックオプションに関する税務などを取り扱うこともあります。

●アウトバウンドに強い会計事務所/国際税務・海外進出支援に強い会計事務所
アウトバウンドに強い会計事務所は、日本企業の海外進出や海外との取引の多い企業の税務に強い会計事務所を指します。アウトバウンドに強い会計事務所はさらに2つパターンに分類されます。

1:海外進出支援に強い会計事務所
ひとつ目は、日本企業の海外進出支援で、中小企業を含めて、海外に出る企業の支援を行う会計事務所です。(以下、「海外進出支援に強い会計事務所」と呼びます。)

海外進出支援に強い会計事務所は、日本企業が海外に進出する際に、現地での事業開始に伴ってその事業形態をどうするか(法人を設立するかどうか等)、設立するのであれば出資比率や役員構成をどうするか、そもそも現地の法律や規制はどうなっているかなどの検討を行い、現地の法律や規制を遵守して、適切な形態で事業を始められるようにコンサルティングを行います。

また、海外で設立する法人が日本法人の関連会社となることも多いため、日本の親会社と海外の子会社間での会計や税務処理の受託や、会計・税務に関する規定整備などの業務も行います。

海外進出支援に強い会計事務所のサービスでは、日本の顧問先の会計税務業務の顧問を行いつつ、進出先の海外では現地の会計事務所と提携して、現地法人の経理・税務・会計業務は、その会計事務所に受託してもらうパターンが一般的です。

2:国際税務に強い会計事務所
ふたつ目は、海外との取引の多い企業の税務や国境をまたいだ国際的な税務業務を専門とする会計事務所です。(以下、「国際税務に強い会計事務所」と呼びます。)

国際税務に強い会計事務所は、海外との取引が多い企業海外に関連会社を多数持っている企業など大企業が顧客となることが多く、また、海外の税務に対応するために海外とのネットワークも必要なため、比較的大手の会計事務所であることが一般的です。

そのため、国際税務を行っているのは、BIG4税理士法人や準大手・中堅などの会計事務所が中心であり、顧客層も、上場企業や、未上場でも海外展開をしている大企業や海外売り上げ高比率が高い企業などが中心です。

サービス内容としては、海外との取引に関する税務処理やアドバイスだけでなく、租税条約に基づく海外への投資に関わる税務、国境をまたいだ組織再編に関する税務、国際企業におけるグローバルでのタックスプランニング、グループ会社間での取引に関する移転価格への対応といった高度な税務論点を取り扱うことが多くなります。

その中でも特に移転価格は特殊性が高いため、大手税理士法人でも、移転価格専門部隊があり、独自にサービスを提供していることが一般的です。

●補足1:インバウンド、アウトバウンドの両方を扱う会計事務所
前述の通り、国際税務に携わる会計事務所には、インバウンドを専門にする会計事務所アウトバウンドを専門にする会計事務所のふたつがありますが、BIG4税理士法人などの大手会計事務所では両方のサービスを提供しているところもあります。

ただし、それぞれの部門が分かれているため、その中で働くスタッフは、両方の業務を経験するのではなく、いずれかの業務に携わっているのが一般的です。

●補足2:国際税務や外資系企業に強い会計事務所のある地域
外資系業やグローバル企業は東京に集中していることから、外資系企業や国際税務に強い会計事務所も東京に集中している傾向があります。

外資系企業や国際税務に強い会計事務所を地理的な視点で見ると、大阪でいくつか見られますが、名古屋ではBIG4税理士法人のみ、名古屋未満の年では皆無に近い状況です。

クライアント・顧客の特徴

●外資系企業に強い会計事務所のクライアント
外資系企業に強い会計事務所では、その呼称の通り、外資系企業のクライアントがメインになります。

「外資系企業」というと、大規企業というイメージがあるかもしれませんが、実際は従業員が数人〜数十人程度であるのが一般的です。
その理由は、グローバルは数千人~数万人規模の従業員数で世界展開をしている外資系企業であっても、日本法人では数人~数十人規模とそれほど大きく法人も多いためです。

●国際税務・海外進出支援に強い会計事務所のクライアント
国際税務に強い会計事務所のクライアントは、中堅・中規模以上の会社や、上場企業が中心となります。

実際は、中小企業でも海外取引に関する税務ニーズは存在しているのですが、国際税務業務は高度でサービスの価格も高くなりがちなため、サービスの提供対象となるのは、中堅以上の企業やある程度資金に余裕のある大きめの会社になることが一般的です。

一方で、海外進出支援に強い会計事務所に関しては、中小企業向けにサービスを展開している会計事務所もあり、小規模~中規模の企業がクライアントとなることが一般的です。

国際税務に強い会計事務所に転職するには?

国際税務に強い会計事務所が求める人材(採用・求人の動向)

●インバウンドに強い会計事務所/外資系企業に強い会計事務所の採用傾向
外資系企業に強い会計事務所については、「会計の実務経験」と「英語力」がポイントとなり、プラスαで税理士科目を取得しているとさらに評価が高くなります。

会計の実務経験に関しては、会計事務所や事業会社での経理経験が評価されます。会計事務所業界では基本的に事業会社での経理経験者よりも会計事務所での実務経験者が好まれますが、外資系企業に強い会計事務所では、事業会社(特に外資系企業)での経理経験者も有力な採用対象となります。

実務経験の年数に関しては、事務所にもよりますが、2~3年程度以上の経験があると良いです。

英語力に関しては、ビジネスでの読み書きができるレベルであればベストですが、TOEICで700点以上や、英語の勘定科目が理解できるレベルの英語力から対象とされます。

資格面では、税理士科目の合格者以外にも、USCPAやBATICの取得者が対象となることもあります。

通常の会計事務所では「会計事務所における実務経験」と、「税理士科目の取得」が必要とされがちですが、外資系に強い会計事務所に関しては、会計事務所業界全体で英語ができる人材が少ないため、事業会社での経理経験者でもOKであったり、税理士科目を持っていなくても英語力があれば採用対象となる点が特徴的と言えます。

●アウトバウンドに強い会計事務所/国際税務・海外進出支援に強い会計事務所
国際税務に強い会計事務所や海外進出支援に強い会計事務所については、大手会計事務所であることが多いため、「会計事務所での税務経験」「税理士科目」「英語力」の全てが必要とされる傾向があります。

実務経験は、年齢によりますが、税理士科目に関しては3科目程度以上が求められることが多めです。

英語力に関しても、読み書きができる状態であればベストですが、TOEIC700点以上であったり、それと同等の英語力があることが望ましいとされます。

一方で、前述の通り、会計業界では実務経験と英語力の両方を有する人材が非常に少ないため、好景気で人不足の時には、採用要件が緩和されることもあります。

具体的には、BIG4税理士法人であっても、若手であれば基礎的な英語力と税理士試験2科目の合格で採用されるケースもあります。

国際税務に強い会計事務所に転職するためのポイント

外資系企業や国際税務に強い会計事務所に転職するためには、「実務経験」「資格」「英語力」の3つを揃えることが重要です。

●外資系企業に強い会計事務所に転職するためのポイント
外資系企業に強い会計事務所の場合は、基本的には上記3つをバランス良く身につけるのが良いですが、「実務経験」と「英語力」から先に磨いていくのでも良い傾向にあります。

会計事務所業界では、一般的に「実務経験」と「資格(税理士科目)」が重視されますが、前述の通り、会計業界では英語力のある人材が少ないため、外資系企業に強い会計事務所では、資格よりも英語力のある人材を優先する傾向にあります。
そのため、まずは、経理や会計事務所での実務経験を積みながら、TOEICを取得(700点程度以上が目安)することによって大きくチャンスが広がります。
また、資格に関してはUSCPAやBATICなどでも評価されるケースもあります。

ただし、中長期的な視点でキャリアを考えるとやはり税理士試験に合格し、税理士資格を取得しておくほうが良いと言えます。(逆に、それほどキャリア志向がなく、英語を使った経理業務を経験できれば良いといったケースの場合は、税理士試験の受験までは考えなくても良いかもしれません。)

●国際税務に強い会計事務所に転職するためのポイント
一方で、国際税務に強い会計事務所は、大手会計事務所であることが多く、採用ハードルも高いため、「実務経験」と「英語力」に加え、「資格(税理士科目)」も重視されます。

そのため、「年令に応じた実務経験」「英語力(TOEICの取得)」「税理士科目(最低でも2科目、できれば3科目)の取得」を意識する必要があります。

●補足:国際税務や外資系企業に強い会計事務所に就職できる地域
前述の通り、外資系企業や国際税務に強い会計事務所は東京に集中している傾向があります。

そのため、外資系企業や国際税務に強い会計事務所に転職するためには、東京圏を対象に転職活動を行うことが必要となります。

大阪・名古屋ではBIG4税理士法人が対象となり、それ以外にいくつかある外資系企業をクライアントに持つ会計事務所を対象として活動することとなります。

 

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