会計事務所は特殊な業界であるため、転職や就職に関する情報があまり多くありません。
ここではみなさんの疑問を解決するために、会計事務所業界の就職・転職活動についてよくある質問をまとめました。
目次
ここでは、下記の質問に回答しています。
Q:会計事務所の転職や就職では資格と実務経験のどちらが大事ですか?
Q:大手の会計事務所と小規模な会計事務所はどちらのキャリアがお勧めですか?
Q:大学院での税理士試験科目免除は就職や転職で不利になるのでしょうか?
Q:将来独立したいと考えています。面接で独立希望ということを伝えても大丈夫でしょうか?
Q:過去に短期で退職した職歴があります。短期での退職は履歴書に記載しなくてもよいでしょうか?
Q:会計事務所の転職や就職では資格と実務経験のどちらが大事ですか?
A:会計事務所業界では、資格と実務経験の両方が大事です。
税理士試験を受験されている方はどうしても資格取得のための勉強に意識が向きがちですが、会計事務所業界では資格だけでも、実務経験だけでも評価はされず、資格と実務経験の両方が揃った際に評価が最大となります。そのため、資格と実務経験のいずれかに偏ることなく両方をバランスよく意識してキャリアアップしていくことが理想と言えます。
また、資格や実務経験は「年齢に応じた資格や実務経験」が求められ、目指すキャリアによって必要とされる税理士試験科目数や実務経験の年数や内容も異なってきます。
例えば、目安としては、20代で3科目以上の税理士試験科目を取得し、3~4年程度の実務経験を積んでいれば転職市場での評価も比較的高くなり、中堅規模の会計事務所や税理士法人などへの転職可能性がでてきます。
一方で、準大手や大手の税理士法人への就職や転職を目指す場合は、20代前半での官報合格や、20代半ばで4科目程度に合格し数年の実務経験を有しているということも必要となります。(もちろん、大手会計事務所の採用はそれだけでは決まりませんので、実務経験の内容や人柄なども重要となります。)
Q:税理士試験科目はどの順番で取得するのが効果的ですか?
A:税理士試験科目は数と質(難易度)を意識しながら取得していくことが重要です。
税理士試験科目をどの順番で取得するかは悩ましい問題ではありますが、税理士試験科目には下記のふたつの特徴があります。
- 取得科目数が多いほど評価される。
- 難易度の高い科目ほど評価される。
この2点、そして、「あなたの目指すキャリア」を踏まえて、税理士試験科目の取得順序を決めていく必要があります。
一般的には、最初に「簿記論」と「財務諸表論」を取得し、その後は、合格が狙いやすく、かつ、評価されやすい科目を取得するのが効果的です。
まず取得科目数を増やす第一歩として、会計科目である「簿記論」と「財務諸表論」を取得することから始めると良いでしょう。これらの科目は税理士試験において必須取得科目であるだけでなく、会計事務所業界に就職をする上でも合格が前提になっていることも多く、かつ、難易度もそれほど高くはないので、早い段階でクリアしておくべき科目です。
次に、税法科目を取得していく上で、2の取得難易度を意識していくことが必要となります。
この評価の高い税理士試験科目の代表としては「法人税法」が挙げられますが、法人税法は実務での使用頻度の高い科目であり、ほとんどの会計事務所で高く評価されます。また、相続税や資産税に強い会計事務所への就職や転職では「相続税法」の取得が必須であるケースも多く見受けられます。
これらの科目は評価が高く、特に法人税は必須取得科目のひとつでもあるため、3科目には希望進路に応じて「法人税法」か「相続税法」のいずれかの取得するとよいでしょう。
しかしながら、「法人税法」や「相続税法」は合格難易度が高めの科目でもあるため、これらの科目に注力して不合格だった場合に、合格科目が増えず評価も高まらないというリスクもあります。
そのため、そのリスクを減らすために、次に評価の高い「消費税法」や「所得税法」、または、まずは難易度が低めのその他の科目と「法人税法か相続税法」を並行して取得を目指すのが良いと言えます。
Q:大手の会計事務所と小規模な会計事務所はどちらのキャリアがお勧めですか?
A:大手会計事務所と小規模会計事務所にはそれぞれ良し悪しがありますので、ご自身の志向や希望に応じて判断するのが良いでしょう。
例えば、大手会計事務所には、「安定している」「レベルの高い税務ができる可能性が高い」「小規模会計事務所よりも年収が高い」といったメリットがありますが、小規模会計事務所には「小規模な顧問先が多いのでお客さんとの距離が近い」「税務だけでなく財務や経営相談などにも従事できる」「事務所経営の全体像が見え、独立にプラスになる」などのメリットがあります。
これらのどれがメリットになるかは、ご自身のキャリアプランや希望によって異なりますので、会計事務所の規模だけにとらわれず判断していくことが大切です。
Q:大学院での税理士試験科目免除は就職や転職で不利になるのでしょうか?
A:会計事務所の就職や転職において、大学院での税理士試験科目免除は残念ながら不利になります。具体的には、大学院免除者を採用しない会計事務所があるため、受験できる会計事務所が少なくなったり、似たような実務経験を持つ他の応募者と比較された際、免除者よりも試験での科目合格者が優先的に採用される可能性が高くなります。
そのため、基本的には大学院での科目免除は避けたほうが良いでしょう。
なお、やむを得ない理由で大学院免除を選択する場合は、下記の2点を意識しておくと良いでしょう。
- 税法科目免除ではなく会計科目免除を選択する(税法科目を試験合格しているとまだ評価はされやすい)
- 税法科目免除を選択する場合は、法人税法など評価の高い科目を試験で選択する
Q:将来独立を考えています。面接で独立希望ということを伝えても大丈夫でしょうか?
A:会計事務所の転職市場では、独立希望者は歓迎されにくい傾向にあります。人材を採用し雇用していくにもコストがかかりますし、独立の際に顧問先を持って行かれてしまう可能性があるからです。
そのため、「10年後に独立希望」「将来いつか独立したい」と言った長期的なものであれば比較的大丈夫な傾向にありますが、短期での独立希望となると採用を躊躇される可能性が高めです。
比較的短期での独立を考えている場合は、独立支援制度があるなど、それを受け入れてくれる会計事務所を受検するのが良いでしょう。
Q:過去に短期で退職した職歴があります。短期での退職は履歴書に記載しなくてもよいでしょうか?
A:短期で退職した会社や会計事務所の職歴を履歴書に記載すべきかどうかには、明確な正解がありません。ハローワークの相談員の間でも「記載しなくていよい」「記載したほうがよい」と両方の意見があるようです。(また、どこまでが「短期」なのかの明確な線引きもありません。)
ただし、記載しなかった場合は下記のようなリスクが有りますので、基本的には記載することが好ましいと言えます。
- 会計事務所業界は狭い世界なので、人づてなどでばれるかもしれない(他の業界よりもばれやすい)
- 内定後や入所後に職歴を隠していたことがばれた際、虚偽の経歴を申告したということで内定取り消しや解雇の事由に当たるリスクがある
- 一緒に働く同僚や上司、部下にも過去の経歴を隠し続ける必要があり、職場でのコミュニケーションや人間関係に影響がでるかもしれない
就職活動や転職活動では、内定を獲得することに目が行きがちですが、上記のように入所後のこともしっかりと考えておくことも大切です。