会計事務所はサービス業であるため、人材が事業の要と言っても過言ではありません。
しかしながら、会計事務所を経営されている方々の中には、せっかく採用した人材が短期で退職してしまったということを経験された方もおられるでしょう。そういったケースはなぜ起こるのでしょうか?よくあるパターンを5つにまとめてみました。
- 残業時間が聞いていたのと違った
- 仕事内容が聞いていたのと違った
- 仕事のやり方が違った
- 試験に落ちていたので勉強に専念したくなった
- 入社後にトラブルや事件が起きた
1:残業時間が聞いていたのと違った
会計事務所で働いている人達には、事務系ということであまり残業を好まない性格であったり、もしくは、税理士試験の勉強のために残業の少ない職場で働きたいと考えている人も少なくありません。そういったタイプの人達を採用した際に起こるのがこのパターンです。入社後に予想より残業が多いことがわかると短期で退職してしまいます。
こういったケースは面接で残業時間を伝えることによって回避できます。ただし、残業が「多いですよ」「少ないですよ」といった抽象的な表現では、人によって受け取り方が異なってしまうため、「繁忙期は●●時間くらいですよ」「閑散期は●●時間くらいですよ」と具体的に伝えることがポイントです。
2:仕事内容が聞いていたのと違った
会計事務所で働いている人達は専門性を意識することが多く、「●●業務をやりたい」という希望を明確に持っている人もいます。そういったタイプの人達を採用した際に起こるのがこのパターンです。入社後に希望していた業務ができないことがわかると短期で退職してしまいます。
こういったケースは面接の際に任せる仕事内容を詳細に伝えることで回避できます。具体的には「どういった業務を任せるのか(法人税or所得税or相続税)」「どういった顧客を任せるのか(売上は?資本金は?業種は?)」「どういったポジションで任せるのか(主担当or補助担当or入力担当)」などを伝えることがポイントです。
3:仕事のやり方が違った
2と少し似ているのですが、仕事についていけなかったり、前職と仕事のやり方が違うことにうまく合わせられず短期で退職するケースもあります。こういったケースは細かい現場実務の違いから生じるため、2で仕事の内容を詳細に伝えてあったとしても起こってしまいます。例えば、「前の事務所よりチェックが細かい(チェックが荒い)」「使っているPCやソフトが不便だ」「前職では作らなくてよかった資料を作成しないといけない」などの理由です。
このケースを回避するためには、実務の体制を詳しく説明しておくことが大切です。「作成した資料は誰がどのような方法でチェックするのか」「PCやソフトはどのようなものが支給されるのか」「社内向け、または、社外向けにどのような資料を作成しているのか」などです。また、こちらのやり方を伝えるだけでなく、応募者が現職や前職でどのようなスタイルで働いていたかを聞いてみるのもポイントです。
4:試験に落ちていたので勉強に専念したくなった
会計事務所で働く人達のモチベーションは税理士試験の結果に大きく左右されます。それまで仕事重視で勤務していた人が、税理士試験の結果が良くなかったことによって急に不安になり「税理士試験の勉強に専念するために退職したい」と言い始めるのがこのパターンです。(逆に、受かっていた場合でも「残り1科目なので確実に受かるために退職して勉強に専念します」というケースもあります。)
こういったケースは、夏の税理士試験後や冬の税理士試験合格発表前に採用した人材に起こりがちです。対応方法としては、面接の際に「税理士試験に受かっていそうかどうか」だけでなく「今年の受験科目が不合格だった場合、どう働きたいか」「今年の受験科目が合格だった場合、どう働きたいか」をしっかりと確認していずれの場合でも勤務を続けてくれるかどうか確認することがポイントです。
5:入社後にトラブルや事件が起きた
会計事務所に限らず稀に見受けられるのがこの「入社後にトラブルや事件が起きた」というパターンです。よくあるケースとしては「所長や上司、同僚と合わない(もしくは、揉め事を起こしてしまった)」「所長の人柄が面接と違う(面接では優しかったのに実際は…)」「離職率が高いのに驚いた」といったものです。これには「離職率が高いのに驚いた」「事務所内の雰囲気がイメージと全然違った」というような、客観的な事件でなくとも、「本人にとっては大事件」といったも含まれ、入社後に過度の刺激を受けると将来が不安になり、「辞めるなら早い方がいい」と考え、早期で退職となってしまいます。
こういったケースは回避するのが難しいのですが、「面接ではなるべくたくさんの情報を開示する(なるべく隠し事をしない)」「新入社員の受け入れ体制を整備しておく」といったことを心がけることがポイントです。
以上、採用した従業員がすぐに退職してしまう5つの理由でした。
今後の採用活動に参考になれば幸いです。