事業に関係がある者と将来の取引先:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

税務上、必要不可欠な支出であるにもかかわらず、経費性が制限される費用として交際費があります。
この交際費については、税務上の問題が大きいため非常に多くの裁判例があります。

先日、社長がクレジットカードで支払った飲食代について、それが交際費になるか、若しくは社長が自腹を切るべき私的な費用になるか、争われた裁判例があります。

この事例では、交際費に該当する大前提として、その支出目的が「具体的に」法人の業務と関連していることを要すると判断されています。
掘り下げますと、この社長が支出した飲食費用のうち、写真家や建築家に対するものは交際費とされています。
理由として、これらの者とは現状も取引が継続している取引先であるため、接待をする必要性はあるからです。

一方で、クラブの経営者や飲食プロデューサーとの飲食費用は、交際費にならないとしています。
理由として、現状取引がないことを踏まえ、単に人脈を広げるのに必要な支出に過ぎず、法人の業務に具体的な関連はないため私的な費用だから、ということのようです。

補足すると、人脈を広げると言っても漠然であり、直ぐに取引に結び付くようなものではないため経費性が見えない、と裁判所は言いたいのでしょう。

しかし、営業において新規開拓は非常に重要で、そのためには将来の売上など考えず、見込み客の信頼を得るために飲食費用について自腹を切ることは当然に必要になります。
となると、現状取引関係があるか否かを交際費の前提とすることは妥当ではありません。
加えて、人脈を広げておけば、直ぐに収益にならないとしても、将来大きく花開く可能性がある訳です。

このため、人脈を広げる費用は事業上必要ですし、交際費の要件である「相手方の歓心を得るための費用」であることは明白で、まさに交際費とすべきでしょう。
とりわけ、本件の納税者の業種ですが、広告業ないし飲食業だったようです。

クラブも飲食業の一種で同業種ですから関連性はありますし、飲食プロデューサーなら本業をサポートする存在ですので、これらの者に対する費用は、まさに事業に関連性が大きいと言えます。

不幸なことに、この裁判例は確定したようで、今後交際費の判断として、「業務との具体的な関連」があるかどうかが重視される可能性があります。

このような基準を設けられると、営業活動で絶対に必要になる、新規顧客を開拓するための飲食代や人脈を広げるための活動費については、交際費として認めてもらえず、その全額が経費にならないといった酷な結果になりかねません。
過去の重要な判例において、交際費は「事業に関係がある者との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図る費用」と言われています。

見込顧客も将来の営業に役立つ人脈も事業に関係がある者ですから、今後も税務当局には慎重な判断が求められます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:専従者と他の職業– 経営・会計コンサルティング

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