相変わらず、インボイス制度については、その事務負担の大きさが問題になっています。
インボイス制度においては取引先に交付したり、自社で保存したりする義務がある書類として、適格請求書が定められており、これがいわゆるインボイスです。
しかし、これには所定の様式などありません。
このため、法律上要請される記載事項を満たした書類であれば、手書きであろうが会社独自の様式であろうが、ネットにあるフリーの請求書であろうが、適格請求書として認められます。
加えて、請求書一枚で記載事項を満たす必要はないとされています。
契約書に登録番号を記載し、請求書にその他の記載事項を網羅する、といった形で、複数の書類で記載事項を満たしている場合にも、適格請求書の記載事項を満たしているとされているのです。
この複数の書類の典型例が口座振替の通帳と事務所の賃貸契約書です。
事務所の賃貸の場合、毎月の賃料について請求書を発行するようなケースは多くありません。
この点を踏まえ、国税庁は、口座振替の通帳の記載される引落日を適格請求書の記載事項である「課税資産の譲渡等を行った日」と解説しています。
その上で、その他の記載事項については事務所の賃貸契約書に予め書いておけばいいとしています。
なぜなら、この2種類の書類で適格請求書の要件を満たすことになるからです。
結果として、敢えて毎月の事務所家賃に対する請求書を交付しなくても問題ないと回答されています。
この回答を準用し、税理士の顧問料についても、同様の取扱いができるという見解がネット上に散見されます。
すなわち、毎月口座から引き落とされる顧問料については、預金通帳で「課税資産の譲渡等を行った日」の要件を満たしているとし、別途の記載事項を顧問契約書に書いておけば問題ない、という理屈です。
しかし、「課税資産の譲渡等を行った日」と口座振替日は、同日ではないため、建前としては問題があると考えています。
「課税資産の譲渡等を行った日」は、税理士業務などの「サービス」については、そのサービスを完了した日を意味するとされています。
そうなると、毎月の顧問料について、前月分について当月末に口座振替で支払いを受ける、といった場合には、前月の末日が「課税資産の譲渡等を行った日」です。
しかし、口座振替の日付は当月末日ですので、厳密には、「課税資産の譲渡等を行った日」にはあたらないと考えられます。
事務所の賃貸についても同様のことが言えます。
事務所の賃貸などの「資産の貸付け」については、支払期日が「課税資産の譲渡等を行った日」になるとされています。
先と異なり、口座振替日と支払期日は基本一致しますので問題なさそうですが、銀行等の都合で処理が前後する、といったこともあるでしょう。
となると、振替日と「課税資産の譲渡等を行った日」は一致しない場合もあり得ることになります。
ただし、国税庁が問題ないとしていますので、このような処理をしても税務署は全く問題にしないでしょう。
実際、税務署もインボイスについては、細かすぎるためその実あまり気にしてはいません。
このため、私達納税者も、過度に適格請求書の記載事項に悩む必要はないのです。
とりわけ、問題になったのは政府税制調査会が出した答申です。ここでは、非課税所得の見直しの必要性について言及されていました。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。