増税ニュースにも慎重に対応する:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

岸田前政権時代の話。
岸田前総理は増税に積極的であることもあり、サラリーマン増税という言葉がよく言われました。

とりわけ、問題になったのは政府税制調査会が出した答申です。ここでは、非課税所得の見直しの必要性について言及されていました。

マスコミの報道では、この答申から、今後代表的な非課税所得である通勤手当や社宅の貸与についても見直しがなされるとも言われました。

しかし、実際の答申の内容は報道とは多少異なっていました。

確かに、政府税制調査会は非課税所得について見直しが必要と言っていることは事実ですが、個別具体的にどの非課税所得を見直すべきか、といった点について言及していませんでした。

具体的には、非課税所得の代表例である通勤手当については、「参考:主な非課税所得」として例示で挙げられているだけでした。

非課税所得にはこのようなものがありますよ、と解説しているに過ぎなかったのです。

加えて、税制改正においては、与党税制調査会が具体的な方策を決めており、政府税制調査会の意向が反映される訳ではありません。

実際、税制改正については、どの税理士も与党税制調査会の資料を詳しく読んでおり、政府税制調査会の資料は参考程度にしか見ていません。

実現可能性があるのは与党税制調査会の意向だからです。

このため、政府税制調査会の答申を取り上げて、通勤手当が課税される、といった報道を見ても煽り過ぎのようにしか思えませんでした。

この点、経営者の節税に使われている社宅家賃を見直すのであれば、国民の理解も得やすいでしょうが、仕事で絶対に必要になる通勤費を補てんする通勤手当に課税するとなると、到底国民は納得できません。

実際、サラリーマンは給与所得控除という概算の控除しか認められておらず、通勤費の実費は現状経費と認められていない訳ですから、経費は認めないのに収入には課税するとなると、理屈としても無理があります。

このため、通勤手当に対する課税は無理があり、仮にそれが実現するのであれば、流石に政権は持たないだろうと考えたものです。

岸田政権後の石破政権も、増税志向が大きいこともあり、今後も増税改正が実現する可能性は大きいと考えています。

しかし、実際に増税が実現するかは政治情勢にも影響されますので、実現可能性は不確実です。このため、報道に左右されず冷静に情報を確認する必要があります。

加えて、税は専門的な部分が大きいものです。増税というと、非常に大きな注目を集めますが、マスコミの方も十分な知識がないからか、実現可能性も踏まえずに不正確な情報を流すこともあります。

このため、税に関しては社会状況も見ながら、慎重に改正情報をチェックする必要があります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:増税ニュースにも慎重に対応する– 経営・会計コンサルティング

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