税理士法違反は書面で決まる:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

すべての税理士が心配するリスクの一つに、税理士の免許が取り消される懲戒処分があります。

脱税指導をしたり、自身が脱税申告をしたり、そして無資格者に名義を貸して申告書を作ったりするような分かりやすい税理士懲戒処分ならその適用範囲はよく分かります。

しかし、現実にはこれら以外の盲点となりやすいケースであっても、懲戒処分の対象になることがありますので注意が必要です。

例えば、税理士法の解説書などを見ると、重加算税の対象になるような、隠ぺいや仮装経理の申告書を作成すると懲戒処分の対象になると解説されています。

しかし、重加算税を課されるような申告書を作成したとしても、現実問題として懲戒処分を受ける税理士はほとんどいません。

実際、税務調査を行ってきた身からすれば、調査先の納税者に重加算税を課税できればそれでよく、特に評価もされないので税理士の責任追及はまずやりませんでした。

こういう訳で、税理士懲戒処分のリスクがあると言われるさまざまな事例がありますが、よほど露骨で悪質な脱税をするようなことがなければ、現実問題として懲戒処分はないと個人的には考えています。

しかし、とある税理士懲戒処分に詳しい弁護士と意見交換をしましたら、懲戒処分で最も重要なのはその行為の悪質性ではなく、「書面」ということでした。

税務調査で十分な証拠を入手できない場合、税務当局は確認書という書面を納税者に書いてもらって、それを根拠に重加算税を課税する、といった実務が行われています。

この実務(一筆)に対しては、非常に多くの批判も寄せられていますが、いったん書いてしまうと有効な証拠とされます。
このため、税務調査に強い税理士は、一筆を極力断るように指導しています。

しかし、このような税務署に強い税理士でも、自分の免許のことになると、税務署ににらまれたくないと考えてしまいがちです。
結果として、税務署に言われるがまま、税務署に都合のいい内容の書面を書いてしまうことがよくあります。

この書面の中に、税理士懲戒処分をする際に有用な文言が含まれていることがよくあり、そうなると税理士にとって大きな不利益につながります。

困ったことに、税理士懲戒処分の対象は非常に広いです。中小企業は経理にあまり労力をかけられないため、決算に必要な資料が揃わないといった事態がよくあります。

このような場合、申告をしない訳には行きませんから、税理士は会社から提示される資料だけで決算書を作ったり、棚卸資産の評価はすべて納税者の責任として、内容を詳しく確認せず処理を行ったりすることがあります。

しかし、税理士法上、正しい決算書を作る義務は税理士にありますので、税理士が全ての資料を確認せず、棚卸資産の評価を納税者に任せる、といった対応は本来正しくありません。

正しい数字を作れない現状にあるのに申告書などを作ることは懲戒処分の対象になり得る訳で、このような事情があることを一筆で提出してしまうと税理士懲戒処分に影響します。

このため、税理士も一筆には非常に注意しなければならないのです。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:税理士法違反は書面で決まる– 経営・会計コンサルティング

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