買換特例の恐ろしい改正:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

本年4月から、買換特例について、非常に大きな改正が実現しています。

買換特例とは会社の所有する不動産などを売却し、その売却金額で、新しい不動産などを購入する一定の要件を満たす買換えを行った場合の税制上の特例です。

不動産の売却額は高額になることが通例ですから、この要件を満たす場合、買換特例は多額の節税になります。

実際、仮に税理士が要件を満たしているのにこの特例を使わないと、損害賠償請求の対象になります。

本年の4月から、この特例について、期中届出制度が採用されています。

特例の対象になる不動産などを譲渡した場合、その譲渡をした4半期ごとに、その末日から2か月以内に税務署に次に買い換える予定の資産などについて届出をする必要があるとされています。

この届出を失念すると買換特例の適用を受けることができなくなります。

過去の制度では、所定の不動産などを売却してから、節税をするために、それから買い換える資産を決めても問題はありませんでした。

しかし、買い換える資産が決まっていないのに、資産の買換えをサポートする税制措置を使えるのはいかがなものか、という意見が従来からありました。

この点を踏まえて、売ってからすぐに届出を行うこととされたのです。

この改正ですが、税理士の間では非常に怖い改正として受け入れられています。

なぜなら、税理士は期中に顧客と接触することは多くないからです。

税理士のメインの仕事は決算書や申告書の作成ですので、決算日前後や申告期限あたりで顧客と打ち合わせを行うことが通例です。

実際のところ、決算日前後の打ち合わせで、会社が期中に税務上問題になる処理を行っていたことを税理士が把握する、という事態も珍しくはありません。

しかし、この改正により期中の届出が必要になりますので、期中において顧客の動向を適宜把握する必要があります。

このため、税理士は顧客に対し、買換特例の対象になりそうな資産の売却を予定している場合には、早急に連絡する旨を伝えておく必要が生じています。

なお、届出を失念してしまえば買換特例の適用はありませんので、提出ミスがあれば確実に顧客から損害賠償請求を受けることになります。

結果として、税理士は顧客の状況を今まで以上に把握しなければならないことになりました。

更に、買換特例ですが、効果的な節税である反面、要件を満たす不動産などを実際に売却した場合が対象になりますから、適用を受ける頻度は多くありません。

このため、適用対象になり得ることを顧客に伝え忘れるミスなどもあり得ると思われますので要注意です。

この改正は非常に恐ろしい改正で、今後この処理を失念した税理士の事故事例なども報道されるように思います。皆様としても、この点注意してください。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:買換特例の恐ろしい改正– 経営・会計コンサルティング

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