最近、税務調査を受ける時必ず調査官が言うことの一つに、税務署の人手不足があります。
私の現職時代には税務職員が多すぎる感があった税務署ですが、日本の財政赤字が大きいことなどを踏まえたからか、近年は採用を減らしています。
このため、調査官としてはなかなか仕事が回らず、組織への不満はもちろん、税務調査に協力してほしいという意味があるのでしょう。
「人手不足で大変です」といった話を調査官はよく口にします。
目先の人手不足を解消したいのであれば、税務職員の定年を撤廃するのが早くてかつ効率的です。
税務職員としての経験がある職員が残る訳ですから、無駄な研修や採用のコストもかかりません。
加えて、再雇用を進めれば、税務職員の人件費を下げることもでき、財政赤字も減らせます。
何より、税務当局を辞めて国税OB税理士になっても稼ぐのが困難な時代です。
このため、税務職員の老後の保障という点でも定年廃止は優れていると思います。
そして、人手不足を嘆く、税務職員が見落としていることは、日本が人口減少社会に突入していると言うことです。
このため、新規採用を増やす余裕があっても、現状はそれが非常に困難でもあります。
民間企業も同様の状況にあり、だからこそ近年はどの企業もDXなどの技術革新に努めている訳です。
この流れにのって、税務当局もITの活用を増やせばいいはずです。国としても、DXを進めることを奨励している訳ですから。
しかしながら、税務署は未だにファックスができない、電子メールができないという状況にあります。
これが進まないのは、誤送信による守秘義務違反のリスクを踏まえたものです。
しかし、この点はどの企業も同じであり、それをうまくコントロールするのが組織の役目と思われます。
人手不足でも上記のような点を是正すれば、仕事の効率化が可能になり、現状が改善されると思います。
こういう訳で、税務職員の人手不足は税務当局が解決すべき問題です。
このため、納税者としては税務当局に同情し、必要以上に協力する必要はないと考えます。
実際、法律上も最低限の協力でいい訳ですから。
このような状況にありますので、税務署も現状の仕事の進め方を見直し、DXを進める必要があると考えています。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。