税理士はもちろん、企業の経理担当の方もインボイスの対応に苦慮しています。
このインボイスですが、税務署としては細かく記載事項をチェックするといったことは基本やりません。
具体的には、インボイスは所定の事項が書かれた請求書を意味しますので、請求書であっても品目や納品日などが書かれていない請求書は原則としてインボイスには該当しません。
このため、税務署は本来、税務調査において、インボイスの記載事項を満たしているのかチェックしなければなりません。
しかし、税務署は記載事項が多少欠けていたとしても、それだけで消費税の控除を認めないといったことは原則として行わない意向です。
この点、前財務大臣のインボイスに係る国会答弁が有名です。
「税務調査は脱税などの不正発見のために行われるのが建前であり、細かい記載事項を細かくチェックするような税務調査をインボイス制度がスタートしても目的とはしない」
このような回答をしています。
同様に、国税庁の幹部職員も、「インボイスの記載事項が不足していたとしても、他の書類なども確認するなどして柔軟な対応をするように考えている」といった答弁をしたという記録があります。
実際のところ、インボイス制度がスタートしていない現状においても、法律上は所定の事項が記載された請求書を保存していなければ、その納税者は消費税の控除が認められないとされています。
しかし、現状「記載事項が不足しているので消費税の控除は認められない」といった指導を、税務署は原則として行っていません。
この点、クレジットカードの明細の取扱いが有名です。
クレジットカードの明細は仕入税額控除の要件となる請求書には当たらないと国税庁のホームページに明記されています。
しかし、税務調査ではこのクレジットカードの明細があれば経費を支払った事実関係は分かりますので、消費税の控除についても基本的には認められています。
なお、記載事項が足りないという理由で問題になった事例としては、請求書に書かれた名義が仮名であるような、不正取引のケースがほとんどです。
このため、記載事項が足りないことにつき納税者にケチをつけることはあるかもしれませんが、不正取引に関係しないものであれば、控除を認めず消費税を追徴する、といったことはないと思われます。
何より、税務調査という仕事が嫌いな調査官は一枚一枚領収書や請求書を見る、といった手間が大嫌いです。このため、細かく記載事項をチェックするといったこともほとんどないように思います。
以上を踏まえると、インボイスの記載事項が多少足りなかったり不備があったりしたとしても、税務調査ではスルーされることも多いように思われます。
結果として、インボイスの要件に細かくなりすぎず、最低限の記載があるか、そして経費を支払った事実がきちんと疎明できるかどうか、この点に留意しつつ対応を考えるべきと思われます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。