健康診断費用は直接支払いが要件なのか?:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

最近、連続して同じ質問を税理士の方から受けて非常に驚かされたことがあります。
それは、会社が従業員のために実施する義務がある健康診断費用に関する話です。

具体的には、会社が直接健診機関に支払わなければならず、仮にいったん従業員が立て替えて支払い、後日会社が精算した場合には給与として課税される、といった噂があるとのことです。
さすがにこんな取扱いはナンセンスとしか思えません。

このため、こんな話は真実ではないと申し上げましたが、よくよく調べてみると、権威がある税務雑誌などに同じ解説がなされており、驚かされています。

直接支払うことと、一旦立て替えてもらい後日支払うこと。これらに差異は全くありませんので、何故こんな取扱いになるのか常識的に考えても理解に苦しみます。
強いて言えば、従業員が選んだ健診機関で健康診断を行い、その費用を精算するようなことが問題視されたからかもしれないと考えています。
健康診断費用は会社の福利厚生費の一つですから、当然ながら従業員間で負担に差が生じるようなことはあってはなりません。
そして、会社の経費である以上は、従業員が自由に選べるということもあってはなりません。

実際のところ、従業員が自由に選んだ住居を社宅にするといった取扱いは認められていません。従業員が自由に選んだ家は、業務必要性がある社宅とは言えないと考えられているからです。

反面、仮に健診機関を従業員が自由に選択できない場合には問題がないでしょう、すなわち、会社が健診機関や健康診断のメニューを指定して、そこで所定の健康診断を受けさせる場合です。
このような場合には、いったん従業員がその費用を支払い、後日精算したとしても全く問題ないとしか思えません。

何より、このような処理をすれば、課税上の弊害があるとも思えませんので、国税OBはもちろん現職の調査官も、直接支払っていないから給与、などと指摘することはないと考えます。

このため、いくら権威ある雑誌に健康診断費用について立替金の精算は認めないと明記されていたとしても、税法の解釈は「常識」に照らして行うべきですから、その「常識」に照らして課税なしと判断して問題ないと考えます。

しかし、税理士は処理を間違えてしまうと大変なことになりますので、「常識」的にはおかしいと考えていても、納税者に対する責任があることから、そのおかしな処理をせざるを得ないと考えがちです。

結果として、「常識」から外れた税務処理がなされることも税務実務では多い訳です。

この点、一つ対策として言えることは金額が少額であれば税務当局は細かくないということです。

健康診断費用については、課税できたとしても大した額ではありませんので、国税職員は原則としてうるさくありません。
「常識」的な判断が怖い場合には、金額が少額かどうか、この点から処理を決めるのが望ましいです。

困ったことに、その真逆で金額が大きいものを積極的に経費にしてしまう税理士が多いため、税務調査でトラブルになります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:健康診断費用は直接支払いが要件なのか?– 経営・会計コンサルティング

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