税務調査で追徴税額が発生すると、その追徴税額に対する遅延の利息として延滞税が発生します。
この延滞税をストップさせる効果を持つ制度として、「予納」があります。文字通り、調査で発生しそうな税額を、予め納めることを言います。
予納は非常に効果的な制度ですが、私が税理士として独立した10年ほど前は、国税庁はこの予納についてほとんど対外的に告知していませんでした。
利用されると延滞税が減って困るからでしょうか。
しかし、近年はその態度を改めて、国税庁のホームページに予納の利用に関するパンフレットを掲載しています。
それに止まらず、税務調査の交渉時に調査官の方から予納を薦められることもあります。
このように、むしろ利用を後押しするような対応に代わってきた印象があります。
とりわけ、不正取引を行った場合、延滞税は雪だるま式に増えていきます。結果として、不正取引がある場合には、早期に予納するべきです。
実際のところ、過去の判例ではマルサの方が予納を薦めたこともあるようです。
決して不正取引を奨励する訳ではありませんが、予納は権利ですし、早く納めてもらえば税務当局も都合がいいですから、積極的に利用すべき制度と言えます。
この有用な予納制度ですが、適用に当たっては注意点があります。
それは、予納はその申出書を提出しただけでは必ずしも効果があるとはいえず、予納を申し出る時において、「概ね6か月以内に追徴税額が発生する」ことが「客観的に見込まれる必要がある」という要件があることです。
実際、マルサから予納申出書を出すように指示されたにもかかわらず、この要件には当たらないとされ、予納が認められなかった事例があります。
この事例で示されていることですが、この要件に当たるかどうか、その立証は予納を申し出る納税者が行う必要があります。
となると、概ね6か月後には追徴税額が発生する見込みがあることを示すために、税務調査の交渉の中で、税務調査の決着時期の見込みなどについて、担当調査官の言質を取り記録しておく必要があると考えられます。
その他、この事例では予納申出書に「予納期限」が書かれていないことも問題視されています。
具体的には、予納期限が書いていないため、概ね6か月に納付する見込みはなかった、という判断がなされています。
予納期限、すなわち納付する見込みの日を書いておかないと予納が認められない恐れがありますので、きちんと記入するようにしましょう。
ただし、困ったことに、現状国税庁ホームページで公開されている予納申出書には、予納期限を書く欄がありません。
代わりに、「申告書等提出予定」日を書く欄があり、これが先の予納期限と同じ意味があると解されますので、こちらにきちんと記載をするようにしてください。
なお、後日のトラブルを防止するという意味では、税務調査を担当する調査官に書くべき日付を聞き、その指示に従って記載するのが確実でしょう。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。