コロナ禍を受けて、税務署は一部の企業について、現在リモート調査を導入しています。
このリモート調査ですが、web会議システムを使っての遠隔調査を意味しますが、そうなると税務調査の折衝を納税者に録音・録画される可能性が極めて大きいです。
となると、税務職員の守秘義務の観点から問題になる可能性が非常に大きいです。
にもかかわらず、税務署はそのリモート調査を更に推し進めようとしています。本当に法律上の問題はないのか、疑義があります。
とある税務雑誌の記事の情報ですが、令和4年10月から、国税局調査部の特官所管法人(大企業の中でも特に規模が大きな大企業が該当します)に対して、税務署は国税庁の機器・通信環境を利用した完全なリモート調査を試行的に実施してきたようです。
それまでのリモート調査は会社に臨場し、会社の会議室と会社のweb会議システムを借りて非対面で調査をしていました。しかし、その臨場すらせずに行う、完全なリモート調査が今後実現する模様です。
なお、この完全なリモート調査は納税者の任意で実施されるものとされており、その実施に当たっては、税務署に予め同意書を出すようになっているようです。
この同意書においては、リモート調査においてウィルス感染等の被害が生じる可能性があることや、調査法人の過失「等」による被害について、税務署が一切責任を負わないこと等を理解するように求められているようです。
実際、税務署に極めて有利な記述が散見されます。
このような同意書を前提とする限り、完全なリモート調査に対する不利益は原則として企業が負うことになりますので、ここまで税務署に譲歩して、リモート調査に協力するべきなのか慎重に判断する必要があります。
ただし、税務調査対策という観点からすれば、リモート調査の方が対策はしやすいと思われます。
税務署の調査官が調査する際、資料を直に手に取ることはできませんので、円滑な税務調査を行うことは困難だからです。
話を戻しますが、注目すべき録音・録画の取扱いについては、録音・録画を禁止すること、そして第三者が調査内容を聴取可能な状態にしないことに同意するよう、調査法人が提出しなければならない先の同意書に記載されています。
税務署はこのような同意を予め得ているので、完全なリモート調査において録音・録画のリスクはないと高を括っているのでしょうか。
しかし、スマホ一台で録音・録画ができる昨今、調査官が税務調査の場に現実に立ち会わないのに、録音・録画を差し止めることなど絶対にできません。
そうなると、録音・録画をしないという同意を取ったとしても何ら実効性のない対策ですから、完全なリモート調査であっても録音・録画されるリスクをブロックできていないことになります。
税務署は後日のトラブルを避けるため、税務調査の録音を禁止するために、録音されたデータが流出するリスクにあること自体、税務職員の守秘義務からして問題と指摘してきました。
完全なリモート調査はまさにこの録音したデータが流出するリスクが極めて大きい状況にあります。
となると、税務署はこのような税務調査を認めるべきではありませんから、守秘義務の観点から、早急に処理を改めるべきと思います。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。