上様名義の領収書のリスク:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

元国税調査官という立場であれば必ず質問を受けることの一つに、「上様名義の領収書で税務署は文句を言いますか?」という問いがあります。

この回答について、私を含めたほぼ全員の元国税調査官は「何も問題ではない」と答えています。

実際、税務調査で上様名義の領収書を見ても、それだけでは誰に支払ったかは不明ですが、経費として支払ったことの一定の証明にはなります。
加えて、さすがに数十万円を超えるような、高額な支出であれば取引先名が書かれた請求書を渡すことが通例です。
そして、仮に請求書がなかったとしても決済はほぼ振込みで振込先を追うことができます。

このため、税務調査で楽をするために、小さい金額にこだわらない国税調査官が、上様名義の領収書に文句を言うことはまずありません。
この点、インボイス制度で領収書や請求書の保存に厳しくなった現状も、大きく変わらないと個人的には考えています。
実際、法律的に上様名義の領収書はOKかと言えば、問題が生じることは基本的にはないと判断されます。

確かに、消費税法上、保存が義務付けられる請求書には、請求書の交付を受ける者、すなわち買主の名前を書かなければならないとされています。

しかし、小売業や飲食店業、そして旅行業など、一定の不特定多数の顧客と取引する事業を行う場合には、買主の名前を書く必要はないとされています。
この理由は、言うまでもなく、多数の顧客と取引をするので、いちいち買主の名前を確認して記載するとなると、非常に煩雑になるからです。

話を戻しますが、多くの納税者の方が疑問に思う上様名義の領収書ですが、その上様名義の領収書の交付を受けるケースは、原則としてこれらの事業者と取引するケースでしょう。

買主の名義を上様とするのは、顧客の名前が分からず、かつ確認することも煩雑だからです。

こういう実務を踏まえて取扱いが定められていますので、法律上も上様名義の領収書は問題になることは原則ないと判断されるからです。

なお、この取扱いですが、インボイス制度でも同様とされています。
交付義務があるインボイス(適格請求書)には買主の名前を書くことが原則ですから、原則論としては上様名義の領収書は認められません。

しかし、上記のような事業を行う事業者は、買主の名前を省略した適格「簡易」請求書を交付することで足り、買主はそれを保存すれば、消費税の経費として認められるとされています。

一点、注意したいのは、上様名義の領収書に証拠があるから問題にならないのではなく、法律上認められた事業者が領収書を交付するから問題ない、ということです。

上様名義の領収書に対して税務署がほとんど問題視しないこともあり、金額が大きくなければ適当な領収書を交付しても実務で問題になることは基本ありません。

このため、実務上、買主を書かなければならない事業者も上様名義の領収書を発行していることがあるかもしれません。

しかし、インボイス制度においては、金額に関係なく適正なインボイスを交付しなければなりません。

現状、厳しい対応をすると国税は言っていませんが、いつ対応が変わるか分かりません。

このため、今後はきちんと整理をした上で、上様名義の領収書が認められる範囲については押さえておく必要があります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:上様名義の領収書のリスク– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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