中古建物の新たな節税が話題に:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

令和2年度改正により封じ込められた節税スキームとして、海外中古建物の節税があります。

海外にある中古建物を購入すると、多額の減価償却費を計上することができますので、日本の富裕層が自身の給与とその減価償却費を相殺することで所得税を節税していました。

このスキームは、海外の建物は日本の建物よりもはるかに長持ちするのに、税務上の耐用年数は日本と海外で変わらないという税法上の欠陥を突いた仕組みでした。

なお、中古資産の耐用年数は税法上の特例でより短くすることができますので、海外中古建物を活用することがより効果的と言われていました。

本スキームは現状制限されていますが、税務雑誌に新しいスキームが紹介されていました。

この新しいスキームは、海外中古建物の資産区分をより細かく区分し、建物附属設備や構築物、そして器具備品など建物以外の資産とすることで、中古資産の耐用年数の特例を活用する、という仕組みです。

あくまでも、現状の節税スキームの制限は海外にある「中古建物」について適用されますので、「中古建物附属設備」や「中古構築物」、そして「中古器具備品」であれば対象になりません。

結果として、これらについては、従来と同様に節税に使うことができます。

このように、建物以外の資産に細かく区分して海外中古建物の節税制限を逃れるスキームなのですが、スキームなどと申し上げると法の穴を突くように聞こえるかもしれません。

しかし、実際のところ、税務上は耐用年数を的確に適用するために、建物などの固定資産は原則として細かく区分しなければならないとされています。

このため、これは新しい節税スキームというものではなく、法律で義務付けられたことをやっているにすぎません。

ただし、実務においては、建物とそれ以外の建物附属設備などに細かく区分することは多くありません。

この理由は大きく二つあり、一つは細かく区分することが難しいからです。

税法の欠陥でもありますが、建物、建物附属設備、構築物、器具備品などの資産について明確な定義はありませんので、正確に区分することはプロでも非常に困難です。

もう一つは、建物以外の資産を建物に区分しても、税務当局はあまり問題にしないからです。耐用年数が長ければ長いほど、経費になる減価償却費は小さくなります。

最も耐用年数が長い資産は言うまでもなく、建物です。

このため、他の資産も建物に区分してもらえば経費が少なくなり税収が増えますので、税務当局は文句を言いません。

このような事情がありますので、法改正が実現するまでは、この新しいスキームを活用しなければならず、それで税務当局から問題視される可能性は低いと思われます。

もちろん、税務当局は節税を放置することはありませんから、改正の動向には注意しなければなりません。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:中古建物の新たな節税が話題に– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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