見落としがちな保険料贈与スキームで有効な反論:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

相続税の節税に繋がる生前贈与に対し、相続税の課税強化の方向性が打ち出されています。

生前贈与を活用した有効な節税スキームとして、保険料贈与スキームがあります。

これは、相続人である子を契約者兼受取人として生命保険に加入させ、その保険料を親が非課税となる110万円の範囲で子に生前贈与させて子に支払わせる、というものです。

このスキームが有効なのは、生前贈与によって親の財産を減らすことができますので相続税の節税になるだけでなく、子が受け取る保険金に対する所得税は一時所得で優遇されるため、相続人にもメリットがあるからです。

このスキームは広く行われていますが、毎年ほぼ定額の保険料を贈与しますので、(1)年金の贈与とされるリスクや、(2)生前贈与が成立していないと判断されるリスクがあると言われます。

(1)については、例えば毎年所定の時期に110万円親が子に贈与するとした場合、親と子の間で毎年110万円もらえる年金を贈与したと判断されるリスクを意味します。

年金は「定期金に関する権利」という財産にあたり、年金の元本相当額を基礎とした評価がなされ贈与税が課税されます。

このため、仮にこれに当たるとされれば、110万円の非課税枠を超え多額の贈与税が課税されることになります。

対策として、所定の時期に定額で給付されるのが年金ですので、毎年贈与の時期や金額を変えるべきと言われます。

次に、(2)の生前贈与が成立していないとされるケースですが、これはいわゆる名義財産の話です。

生前贈与が成立しないのであれば、保険料は子ではなく親が直接負担していることになるため、契約者である子は単なる名義人で、本来は親の生命保険であり親の相続税の対象になる、といった認定ができます。

子への生前贈与がきちんと成立していれば問題ありませんから、その証拠を示すために親と子で贈与契約書を作ったり、110万円までなら贈与税の課税はありませんが、敢えて税額が0円で贈与税の申告をしたりする対策が必要と言われます。

ただし、これらの処理を行うと手間がかかりますので、これらの対策を取っていない方も多いと思います。

このため、税務当局と揉めることになる訳ですが、上記のほかに効果的な対応策として、所得税の生命保険料控除の適用があります。

所得税の生命保険料控除は、生命保険の契約者ではなく、実際に保険料を支払った者が適用を受けることとされています。

このため、子が契約者の生命保険の保険料を親が支払った場合、親が生命保険料控除を受けることができます。

言い換えれば、生命保険料控除は生命保険料控除の支払者が誰かを示す有効な証拠になり得る訳です。

生命保険料控除は契約者である子が行っていることが通例ですから、生命保険料控除を子が行っていることを主張しましょう。

理論上は、保険料は子が実質的にも支払っていることになるため、親は保険料負担者ではないことから、親の名義財産ではないと反論できるはずです。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:見落としがちな保険料贈与スキームで有効な反論– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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