鑑定評価での按分が認められた事例がある:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

消費税の計算上、土地と建物を一括で購入した場合の按分が問題になります。

土地の消費税は非課税である反面、建物は消費税が課税されます。

支払った消費税は消費税の計算上控除できますので、土地付き建物を一括で購入した場合、建物部分の消費税を計算する必要があります。

契約書などで土地と建物の内訳が明確であればその通りに按分すれば原則問題ありませんが、書かれていない場合は合理的に按分することになります。

この合理的という基準ですが、税務的には原則として時価を意味します。具体例を申し上げると、1億円で土地付き建物を購入した場合、土地の時価が6000万、建物の時価が4000万と評価されれば、それぞれこの金額で按分することになります。

問題になるのは、何をもって時価とするか、ということです。

時価といっても、相続税の評価や不動産鑑定士の評価など、いろいろな時価があります。

採用する時価によっては、建物の金額が変わりますので、消費税の計算も変わります。とりわけ、建物の消費税は巨額ですので、場合によっては消費税の還付も発生します。

土地付建物を購入した時、意図的に建物の時価が大きくなるような評価を採用すれば、消費税の節税が可能になります。

このため、採用した時価が適正なのか、国税も厳しくチェックします。

この点、裁判例においては、建物と土地の按分は固定資産税評価額でやるように判断されることがほとんどです。

この理由は、固定資産税評価額は公共機関が発表するため信頼性があること、そして固定資産税評価額は地方公共団体という同一の機関が評価するため、按分には合理的であること、が挙げられます。

こういう訳で、取り敢えず固定資産税評価額で按分しておけば、実務で問題になることはありません。

ところが、先日の裁判例では、固定資産税評価額ではなく、鑑定評価での按分も、合理的であるとして認められました。

とりわけ、この事例においては、鑑定評価の按分の方がより固定資産税評価額よりも建物の金額が大きく計算されたため、支払った消費税額も大きくなり、納税者に有利になりました。

仮に、このような処理が認められれば、鑑定評価と固定資産税評価額、有利な方をうまく選択して、消費税の節税を図ることができます。

なお、鑑定評価は不動産鑑定士によってかなり異なることが通例です。中には、顧客の意向を踏まえ、違法にならない範囲で顧客に有利な鑑定評価を出してくれる場合もあると聞いたことがあります。

となると、鑑定士とうまく連携をとれば、建物の金額を大きくしてもらい有利な消費税の計算ができる場合もある訳です。

もちろん、やりすぎると国税ににらまれますので、適正と認めさせる交渉力も必要になります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:鑑定評価での按分が認められた事例がある– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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