防衛増税を行うなど、岸田内閣の税制改正の方向性は増税のように思われます。
この防衛増税ですが、企業誘致のため、数年前まで、各国は法人税率の引下げを競って行っており、日本の法人税率も下げられました。
しかし、コロナ禍やウクライナ危機があり、企業が納税する国を選ぶグローバル経済の時代は終わりつつあると言えますので、外国の法人税率を気にする必要もない、といったことを政府は考えているのでしょうか。
とりわけ、台湾危機も迫るという話もある中、防衛増税は必須と言われますが、経済状況はまだまだ厳しいことも事実です。
このため、法人税率を引き上げるにしても、同額の政策減税を導入することで、実質的な税負担が増大しないように配慮する、といった対策も考えられているようです。
一例をあげると、六月からスタートする定額減税などはこの典型でしょう。
政策減税で法人税増税の効果が打ち消されるのであれば税率が上がっても問題ない、と思われるかもしれません。
しかし、実はこのような税制改正は非常に大きな問題です。なぜなら、法人税率の引上げは法人税法改正して行われるのが通例である反面、政策減税は原則として租税特別措置法の改正で行われるからです。
隠れ補助金とも言われる租税特別措置法は、特別措置というタイトルからもわかる通り、原則として期限付きの法律になっています。
期限付きであるため、一定期間立てば延長されない限りその条文は自動的に廃案となりますし、仮に期限付きでなくても、法律の廃止なので、改正があまり目立たず、国会を通すことは比較的に簡単にできると言われます。
一方で、法人税法を変えることは非常に大変と言われます。このため、いったん税率を上げる改正をしてしまえば、おいそれと下げられませんし、その法律を廃止してなかったことにすることもできません。
このため、政策減税で法人税の増税を相殺する、と言っても安心してはならず、いずれは法人税の増税だけ残るという事態が想定されます。
実際、定額減税、これは所得税の減税ですが、一回きりの制度です。
こういう訳で、経済状況がまだまだ困難な中、法人税率の引上げは何とか見送ってほしいものですが、岸田政権は財務省に配慮します。
このため、順調にいけば防衛増税も実現しそうな雰囲気です。
私たちとしては、政治状況に留意するとともに、法人税増税が実現した場合に備えて、生命保険の見直しなど、節税の見直しも進めておいた方がいいのかもしれません。
増税が実現すれば、税理士としては腕の見せ所なのかもしれませんが、経済がこれ以上落ち込まないよう政府には慎重な対応を求めたいところです。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。
参考サイト
著書
引用元:「法人税率引上げを政策減税で相殺する」に騙されてはいけない– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング