とある税務雑誌で紹介されていましたが、税務署がさじ加減で相続税の節税を否認できるという、総則6項が適用されるか否かで争われた事例があるようです。
こちらの事件は、最高裁が受理しなかったようですが、その高裁判決では、銀行員と相続税の節税について相談したことが書かれた、「顧客訪問録」が問題になりました。
最高裁で争われた事例では、銀行の稟議書に相続税の節税目的で借り入れることが問題視されました。
しかし、今度は顧客訪問録が判決の基礎になっているようで、細かく記録を残す銀行との付き合いをどうするかが、今後の税務対策ではますます重要になってきます。
とはいえ、総則6項は「評価額」が「著しく不適当」の場合に国税庁長官が自由に評価できるという規定です。
にもかかわらず、節税目的などの「目的」が税務署にとって「著しく不適当」の場合に自由に評価できる、というのは明らかに問題がある判断です。
このような判断が出るので、節税目的ではないビジネスの目的があれば相続税の節税スキームを税務署が問題視することはない、などとこれまた誤った解釈を拡散する自称専門家が多数生まれることになります。
本連載でも指摘しましたが、税務署から否認される節税と否認されない節税の境界線は、「節税額」という単純な基準以外にはありません。
節税額が小さければ、それが合法であれば、まず問題になりませんが、節税額が大きければ合法であっても税務署は必ず問題視します。
このため、節税以外の目的があるとか、その目的を疎明するエビデンス(自分に都合のいいように作った安直なものがほとんどですが)があるとしても、あまり意味ないので安心してはいけません。
節税額が数千万円を超えるようなケースはどれだけ法律的なガードを持っていても、リスクがあります。
このため、例えば国税当局に対して圧力を使える元税務署長等の経験者の税理士を用心棒として雇ったり、国税OBが飯の種を稼ぐために公開している、税務調査をかわすノウハウを勉強したりするなど、闘うことを前提に節税しなければなりません。
多額の節税スキームには法律知識が必要不可欠ですので、頭の切れるコンサルが提案することが多いですが、税務調査は交渉力で決まります。
なお、総則6項は税務調査でけしからんとされた結果適用されますので、多額の節税をした場合には、申告した後すぐに海外に拠点を移す、ということも検討すべきでしょう。
税法の仕組みとしては海外資産に対する課税も厳しくなっていますが、税務調査は納税者が国内にいるかどうかでやりやすさが全く違います。
となると、海外にいるだけで税務調査対策はやりやすくなります。
節税を否認できるという総則六項はフェイクニュースと誤解に溢れています。しかし、司法の救済は期待できません。
だからこそ、理論や理屈ではなく、交渉力やテクニックで逃げる方法を考える必要があります。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。
参考サイト
著書
引用元:「節税目的はありません」では戦えないからこそや るべきこと– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング