6項と信義則違反:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

税務上、認められることはほとんどありませんが、納税者の最後の盾ともいえる防御方法として、税務署の信義則違反があります。

民法の1条に、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」という規定があります。これが信義則です。

日本は自由主義の社会ですので、基本的には個人が自由に経済活動ができます。

このため、権利行使にしても義務の履行にしても個人が自由にできるはずですが、そうなると恣意的な行動をする者もいて、不適切な問題が生じることもあります。

この点を踏まえ、相手の信頼を裏切らないよう誠実に行動すべきと定めており、それが信義則です。

法律の1条は、その法律の中でも最も重要な原則を定めたものですので、この原則に違反した取引は民法上違法とされています。

この民法の信義則は、税務においても妥当するとされており、税務署がその取引相手である納税者の信頼を裏切るような課税をした場合、それは当然に違法になると考えられています。

一例として、「課税されないと言われたのに後日課税された」といったことが挙げられます。

税務署も人間の組織である以上、誤った行政を行うこともあり得ますから、税務署と争う場合の最終手段として、裁判において信義則違反を主張することがあります。

とはいえ、国税当局の信義則違反はよほどの悪質性がないと認められません。

このため、税務署の信義則違反が認められることは基本的にはありません。

しかし、何らかの反論根拠がなければを税務署を訴えることもできない訳ですから、戦う手段としてこの原則があることは納税者にとっては有用です。

ただし、近年増えている、安易な節税による相続税スキームを否認できるという総則6項を使われると、信義則違反で争うことも非常に困難になります。

この総則6項は「評価方法が著しく不適当」の場合に、相続税の通達に関係なく国税庁長官が自由に相続財産の評価ができる、という規定です。

確かに、著しく不適当かどうかの「解釈」は意味不明ですが、著しく不適当という「適用要件」は明記されていますので、評価額と時価に差がある場合には、課税される恐れがあることは理解できます。

このため、この規定が適用されリスクを常に納税者は事前に把握できますので、不意打ち的に国税当局から課税されることはないという結論になります。

結果として、その可能性があることを知らせている以上、総則6項を使われたとしても、納税者の信頼を裏切ったとまでは言えません。

となると、この規定を使っても信義則違反にならない、という言い訳が成立することになります。

通達は国税庁ホームページにも掲載され、納税者にも周知されている公的な文書ですから、それと矛盾した内容で税金を取ると、納税者の信頼を裏切ったとして信義則違反になる可能性があります。

しかし、同じ相続税の通達で総則6項を定め、あらかじめ言い訳をしているので、納税者を騙していないという反論が成立します。

この信義則違反の主張も難しくなるのが総則6項で、やはり非常に大きな問題があると言えます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:6項と信義則違反– セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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