2024年4月の税理士業界ニュースをお届けします。
今回は2024年3月14日、4月5日の記事
- 転売ビジネス指南の会社・代表を脱税容疑で告発
- 警察事件での初の司法取引は税理士も関係する融資詐欺
の2件をご紹介します。
転売ビジネス指南の会社・代表を脱税容疑で告発
「転売ビジネス」と聞くと転売ヤーといった言葉からあまり良くないイメージを連想する人もいるかもしれませんが、必要な許認可を取得して行ったり、転売が違法になる商品を扱わないようにするなど、ルールを守りながらビジネスを行うことや、転売ビジネスを指南すること自体は法に触れるものではありません。
ですが、そこで得た売上・所得を申告しなければ、脱税になり、法令違反になります。
今回、転売ビジネスを指南するコンサルティング会社の脱税に関する記事が、讀賣新聞オンラインからリリースされています。
みそやしょうゆを転売して利ざやを稼ぐ「転売ビジネス」を指南するなどして得た所得を隠し、計約5000万円を脱税したとして、東京国税局がコンサルティング会社(東京都台東区)と代表の男(38)を法人税法違反と所得税法違反容疑で横浜地検に告発したことがわかった。
【引用元:みそやしょうゆ「転売ビジネス」指南、法人税法違反容疑でコンサル代表を告発…東京国税局(讀賣新聞オンライン 2024年3月14日付)】
記事によると、2018年12月に設立したコンサルティング会社が、2021年11月期までの3年間に計1億5,700万円の売上を隠し法人税3,700万円を脱税、また、会社設立前の個人事業主として所得税1,300万円を脱税した疑いがあると伝えられています。
最近、納税者の状況を調べる手段のひとつとして、納税者のSNSをチェックすることがある、と言われています。実際に、SNSの投稿をきっかけに税務調査の対象となり、脱税が発覚したこともあります。本件では、YouTubeで「脱サラして月商1184万円」と情報開示していたことから、国税庁がSNSを利用して所得を推測し脱税を疑われた可能性もありそうです。
警察事件での初の司法取引は税理士も関係する融資詐欺
被疑者や被告人が共犯者の情報を提供することの見返りに、自分の処罰を減免、不起訴処分にしてもらう司法制度。日本では2018年6月に導入されましたが、適用例が少なくあまり知られていないかもしれません。
今回、税理士等による詐欺事件において警察事件では初の司法取引が行われたとの記事が、福島民友新聞からリリースされています。
警察が捜査し、元社長や税理士らが逮捕された自動車販売会社による融資金名目の詐欺事件で、捜査協力の見返りに刑事処分を減免する司法取引(協議・合意制度)が行われたことが5日、捜査当局への取材で分かった。
【引用元:警察事件で初の司法取引 運用拡大へ転換点か(東京新聞 TOKYO Web 2024年4月5日付)】
記事によると、元社長や税理士、税理士法人の職員らは粉飾した決算書で銀行から4千万円の融資を取り付けたことから詐欺容疑で逮捕されましたが、税理士法人の職員が税理士の関与について供述する見返りとして司法取引が成立した、と伝えられています。
司法取引は、これまで東京地検特捜部が捜査した3事件で適用例があるものの、警察事件としてははじめて司法取引制度が適用されたことも報じられています。
今回の詐欺事件のように組織的に秘密裏に行われた事件では、立証に必要な証拠を入手することが難しいケースが多そうです。今回の事件を機に司法取引制度の運用が広まるかもしれません。
今回取り上げたニュース
- みそやしょうゆ「転売ビジネス」指南、法人税法違反容疑でコンサル代表を告発…東京国税局(讀賣新聞オンライン 2024年3月14日付)
- 警察事件で初の司法取引 運用拡大へ転換点か(東京新聞 TOKYO Web 2024年4月5日付)
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)