前々回の確定申告の際に問題になりましたが、確定申告期限が迫る3月14日、e-Taxの接続障害が生じました。
当時を振り返りますと、本来の確定申告期限は翌日の3月15日ですから、多くの税理士はSNSでこの苦境を訴えていました。
これらの声を耳にしたからか、当時の申告期限である3月15日、国税当局はe-Taxの不都合による延長を認めるとしました。
具体的には、「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」と申告書の余白に記載して申告すれば、期限が延長されることとなりました。
当時は一安心したものですが、この余白に記載すれば延長が認められるという点、何かご記憶がある方もいらっしゃるも知れません。
長きに及んだ、コロナ禍の申告期限の延長と同一の手続きと同様の簡単な手続きです。
コロナ延長は個別指定に基づく延長とされていましたので、国税当局はこの接続障害による期限延長のついても、個別指定に基づく延長と整理していたようです。
専門用語が出てきましたので補足しますが、申告期限の延長といっても、法律的には大きく3つに分かれます。
一つは国税庁長官が職権で行う地域指定と言われるものです。これは、特定の地域に甚大な災害が生じた場合に認められるものです。
具体的には、災害のため申告などできないその地域を国税庁長官が指定した上で、その地域の納税者に対し、期日を指定して期限を延長されます。
2つめは個別指定で、期限内に申告などができない原因が個別的な事情である場合に認められるものです。
原因が個別的ですから、その原因について個別に税務署に申請して内容を見てもらい、期限延長すべきと税務署から判断されれば延長が認められます。
コロナ禍による申告期限の延長はこの個別指定によるもとのされており、本来は申請書の提出が必要です。
しかし、一定の期限については、申請書の提出をするのではなく、申告書の余白に延長の旨を記載するだけで延長できるという、簡便的な処理が認められていました。
それだけ、コロナ禍の影響が大きかったと言えます。
3つめは、対象者指定と言われるもので、これはまさにe-Taxの不具合を想定して作られたものです。
e-Taxの影響は地域にそもそも関係ないため地域指定の対象にはなりません。
個別指定についても、e-Taxは対象者が多いため個別の申請にもそぐわないものです。
これらを踏まえ、税制改正でe-Taxの不具合についても延長を認められるようにしたのが、この対象者指定なのです。
対象者指定については、国税庁長官が職権で認めるものとされ、その場合には対象者の範囲や、延長される期日を指定することになっています。
以上を踏まえると、当時のe-Taxの不具合も、まさに対象者指定を行うべきであったのに、どういう訳か個別指定になっていました。
この理由は定かではありませんが、対象者指定によると、対象者を指定するなど国税当局に負担がかかることや、接続障害がまさに申告期限の直前に生じたため、指定する時間的余裕がないことを踏まえたのかもしれません。
しかし、法律的には妥当な処理とは言えないため、いろいろな問題が生じました(以下次回)。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。