市街地価格指数の境界線:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

譲渡所得の計算でよく問題になるのは、「市街地価格指数」を前提とした取得費の計算が認められるか否かです。

相続するなど、古くから所有している土地については、いくらで購入したのか分からないことが多いです。

譲渡所得は、譲渡収入から譲渡した資産の取得費を控除して計算することになりますが、このような購入金額が分からない資産について、控除する資産の取得費は、法律においては譲渡収入金額の5%とされています。

5%となるとあまりにも少ないので、何か特別な方法で購入金額を推定し、その推定金額を取得費とするためによく取られる方法が市街地価格指数による推計です。

これは、平成12年の裁決事例で税務当局が使った方法で、審判所からも合理的と認められているため、一般の納税者も使えると考えられています。

しかし、実際の税務調査では、この方法で譲渡所得を申告すると税務当局から法律に則って収入金額の5%とすべき、と指導されることが多くあります。

審判所が認めているのになぜ認められないか、その理由を聞かれることが多いのですが、実は市街地価格指数による推定は、いろいろと制限がある方法で、その制限をクリアしないと使えないのです。

紙面の都合上、その制限のすべてを解説することはできませんが、先日の裁決事例で指摘されたものを紹介します。それは、昭和27年12月31日以前に取得した土地については、この方法は使えないということです。

この理由は簡単で、所得税の特例で、昭和27年12月31日以前に取得した資産について実際の購入金額が分からない場合、昭和28年1月1日の相続税評価額を譲渡所得の計算上、控除すべき取得費とするという規定が所得税法上設けられているからです。

この規定が優先的に使われることになりますから、市街地価格指数による計算は認められないと結論付けられる訳で、先の平成12年の裁決事例における土地については、取得時期はこの要件を満たしていました。

税理士試験は基本法律の丸暗記ですし、税理士試験を受けない国税OB税理士も、基本税務当局の出世で必要にならない税法を知りません。

このため、税理士は弁護士などとは異なり、リーガルマインドや法律の解釈能力が乏しい資格であるとも言われます。

このため、裁決や判例について結果だけを暗記し、どうしてこのような結果になるのか、法律解釈を通じた過程を見落とすことがありますので注意が必要です。

よく使われる言葉ですが、税法も法律である以上、それを飯のタネとする税理士も法律家である必要がある訳で、税法の研究に努める必要があります。

このような研究は、なかなかお金にならないので後回しにしてしまうことが多く、書籍や税務資料を著作権侵害しただけの浅い知識なのに、税法に詳しいふりをする方も多いので困るのですが。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:市街地価格指数の境界線 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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