権威ある税務雑誌で解説されていたのですが、相続税の税務調査は、納税者を財産に応じ、大きく3つの区分に分けて行われているようです。
具体的には、低階級が1億円未満、中階級が5億円未満、高階級がそれ以上と、このような形で区分がなされているようです。
富裕層であればあるほど、しっかりと調査すべきということでこのような区分になっていると想定され、実際のところ税務調査の日数も、上位の階級に区分されればされるほど、長くなるようです。
それにとどまらず、税務調査で問題視される内容も上位の階級と階の階級では大きな違いがあると指摘されています。
具体的に申し上げると、下位の階級の税務調査においては、相続財産の申告漏れがメインになる反面、上位になると、相続財産の評価誤りが争点になりやすい、ということです。
この理由は、税務署の相続税の税務調査では、評価ではなく不正の発見に力点が置かれているからと考えられます。
不正の発見に力を入れるということは、だれの目にも明らかな誤りを見つけるということを意味します。
このため、グレーな評価ではなく、ほとんどの相続税の税務調査は、預金の申告漏れや名義財産など、財産評価に関係ない論点を指摘で終了します。
実際のところ、税務調査で問題になる相続財産は預貯金が圧倒的に多く、評価が問題になる土地や株式はそこまで問題になっていません。
財産評価は複雑で難しく、かつ見解の相違も大きいため、評価が関係ない預貯金などを問題にすることが多いのです。
一方で、高い階級の納税者については、申告する財産の金額も大きいこともあり、財産評価の誤りも大きな税金の追徴につながります。このため、財産評価の論点を大きな問題となります。
以上を踏まえると、相続財産が少ない場合は多少相続財産の評価を誤ってもスルーされますが、多額の財産を持っている場合には、評価についても十分に注意をして行う必要があります。
しかし、高階級では財産評価が問題になるとはいっても、その中で実際に指摘を受けるのは4割未満といったデータもこの雑誌には掲載されていました。
高い階級は評価にも厳しい、と言いながら、税務調査の目的は不正発見にある訳で、極力財産評価を税務調査で問題にしない、という実態がこの数値に反映されているように思います。
となると、相続財産の申告漏れがなければ後は税務調査の争点にはなりにくい財産評価の問題となりますので、多少評価を間違えてももれなく申告することが相続税の対策上は重要になります。
このことは相続税の節税においても重要です。
私も軽々がありますが、相続税の税務調査の交渉上、申告がもれている財産は適正に申告するので、財産評価については多少低くすることを認めてほしい、といった主張をすると、国税的に評価は面倒なこともあり通ることが多いという印象もあります。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。