フェラーリは減価償却資産:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

固定資産の減価償却について、問題になることの一つに「時の経過によりその価値の減少しない資産」の取扱いがあります。

固定資産は使用に伴って価値が減りますから、その減った価値を費用とする処理が減価償却です。

しかし、時が経っても価値が減らない資産、具体的にはゴッホの絵画などですが、こういう資産は価値が減らないので減価償却を認める必要もないとされています。
減価償却が認められないのであれば、それを売却したり除却したりする場合を除き、その購入金額を一切費用とすることはできません。このため、法人税の計算においては「時の経過によりその価値の減少しない資産」に該当するか否かが大きな問題になります。

過去には、数億円もするような古典楽器であるストラディバリウスがこれに該当すると国税から認定され、減価償却を否認されて多額の追徴課税がなされた事例もあります。
価値が減少しない、となると一般的には高価な美術品や希少価値のある資産を意味すると考えられますので、顧問先がこのような資産を購入すると、税理士としてはかなり神経質になります。

これに関し、先日限定生産のフェラーリが時が経っても価値が減らない資産に該当するかが問題になった事例があります。
問題になったフェラーリは、限定モデルで全世界での総生産台数が数百台から数千台という希少価値のあるモデルのようで、値段も数千万円程度だった模様です。

となると、中古車でも新車以上の値段で今後も取引される可能性が大きい訳で、ストレートに考えると、価値が減少しない資産に該当すると言えそうです。

しかし、この事例のフェラーリは、一般の車両と同様に、時の経過により価値が減少「する」資産に当たると判断されています。

その理由として、

①生産開始から10年から20年程度経過したにすぎないことから、歴史的価値や希少価値があるものとはいえないこと
②登録をして自動車登録番号標の交付を受けて公道を走行しているため、車両として使用する目的で購入されたと認められること

が挙げられています。

①の理由は別にして、「時の経過によりその価値の減少しない資産」に当たるかどうかは、その使用目的とは関係ないはずですから、②の理由については多少疑義があります。

実際のところ、前述したストラディバリウスは、それを無償で貸していたのですが、貸すという使用目的ではなく希少価値のある楽器という性質から、減価償却が否認されています。

このため、使用目的ではなく資産の性質で判断するのが妥当と考えられます。

いずれにせよ、フェラーリは減価償却の対象になると明確にされたのは大きいです。
フェラーリの減価償却を否認しようとする税務調査は多いですから、一つの反論になる事例と言えます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:フェラーリは減価償却資産 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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