自社株の評価はまず簿価純資産:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

私は全国の税理士先生から税務の質問を受けますが、その質問の中で非常に多い内容がオーナーの自社株の評価に関するものです。

税理士は中小企業を顧問にすることがほとんどですが、中小企業は原則として社長と株主が同一人物ですから、社長が自社株を売却するような場合に、その売却金額をいくらと評価するのがいいのか、それが問題になります。

困ったことに、税務は「時価」で取引しないと売却時に課税問題が生じるとしていますから、「時価」を適正に評価し、原則としてその金額で売却する必要があります。

この自社株の評価については、通説として所得税や法人税の非上場株式の時価に関する通達に基づいて行うべき、と言われます。通達は国税庁が作るものですから、この通達の通りに評価して売買すれば、国税は文句を言わないはず、という共通理解があります。

その一方で、この通達は内容が分かりづらいだけではなく、そこで規定されている方法も複雑ですから、誤った解釈をしていないか、よく質問を受けます。
困ったことに、裁判所もこの通達の評価を「時価」とすることが多いため、この通達の評価を仮に間違えてしまうと、大きな問題になると税理士の中では考えられています。
実際のところ、この通達の評価方法の解説だけのセミナーを行って、ご飯を食べている税理士もいるほどです。

こういう訳で、私にもこの通達評価に関する質問が来る訳ですが、一つ言っておくべき真実は、税務署の調査官の自社株の評価は、「簿価純資産」ベースということです。

簿価純資産とは、決算書の純資産の金額を意味します。
理論上、この金額は株式総数の評価額の合計と等しいとされていますので、簿価純資産を発行している株数で割って、売却する株式の数を掛ければ、理論上「時価」である売却金額を算出できるとされています。

理論上と申しましたが、簿価純資産は決算書を見れば分かりますし、株式数も定款などで分かりますから、この方法は誰にでもできる簡単な方法です。

国税庁の通達の方法は、繰り返しですが難しいので、ほとんどの税務署の調査官は簡単に計算できる「簿価純資産」ベースの評価をして、あたりをつけ、その金額と取引価額を比較して、著しい差がないか確認することがほとんどです。
そして、差がなければそのままスルーすることも多くあります。

こういう訳で、自社株の評価でまず気にしなければならないのは、誰にでも計算できる「簿価純資産」ベースの評価なのです。

この評価金額と、国税庁の通達の評価金額に大きな差がなければ、実際のところ税務実務ではあまり問題になりません。

自社株の評価はまず通達で、と解釈すると、一番重要な税務署の評価方法という視点を忘れてしまうので、まずは「簿価純資産」をきちんと確認してみましょう。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:自社株の評価はまず簿価純資産 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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