金融機関は税務を使った営業を見直すべき:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

近年、財産評価基本通達総則6項を使った国税の否認事例が新聞紙面を賑わせています。

本メルマガでも何度も取り上げていますが、これは相続税や贈与税の財産評価上、税務署が決めたルール通りの評価をした場合、租税回避につながるなど不適切な評価額となるときに、税務署が自分で決めた通達に関係なく、別途自分たちが適切と考える評価で評価できるという規定です。
相続税や贈与税の評価はいろいろと穴があり、その穴を突かれると課税逃れにつながりますので、このような規定が設けられていると一般には言われています。

この規定が適用されるかどうか、裁判所が判断する際、近年は「租税回避の意図があるか」といった観点から審査することが増えています。
先日あった事例では、金融機関の稟議書に「相続税対策で融資を申し込む」といった記述があったことを踏まえ、裁判所はこの規定に基づく国税の課税処分を合法と判断しています。

こういう訳で、節税目的をできるだけ押さえることとしたり、たくさんの証拠書類を作る金融機関との取引には注意したりしましょう、とセミナーなどで解説されていますが、もっと重要なのは金融機関の営業を安易に信用しないことです。
聞いたところによると、先の稟議書の事例は、納税者が相続税の節税目的で融資を自発的に申し込んだのではなく、金融機関が相続税の節税ができると営業した結果、融資を申し込んだようなのです。

多くの富裕層にとって、最大の取引先は金融機関であることは間違いありません。
このため、金融機関は富裕層と強いチャネルがありますから、相続税の節税商品を富裕層に売ることがあります。

税務リスクを正確に検討していればいいのですが、先の事例の通り、その検討が甘く、引いては大きな問題に発展することが多々あります。
困ったことに、これらの節税商品ですが、その提案書には、必ず小さい字で「税務については、顧問税理士に意見を聞いてください」といったリスクヘッジの文言が書かれていることが通例です。

結果として、金融機関の営業を信頼して節税を行って、後日の税務調査で実際に問題が発生したとしても、金融機関を訴えることは難しいでしょう。

こういう訳で、金融機関の節税提案を安易に信頼するのも危険であり、もっと言ってしまえば税理士的には怖い節税も多いため、提案を差し控えていただくとありがたい、と考えることもよくあります。

実際のところ、税務相談は税理士法によって、税理士以外には制限されていますので、税務当局がこの法律を使えば金融機関の節税提案をブロックすることも不可能ではないはずで、むしろ税理士法的にはやるべきことのようにも思います。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:金融機関は税務を使った営業を見直すべき – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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