近年、海外のネット事業者に対する課税方式の改正や軽減税率制度やインボイス制度の創設、そして消費税の金還付スキームを否認する改正など、消費税法の大改正が毎年のように行われています。
このような大きな改正が行われるのは、現状の日本の消費税制が欠陥だらけだからです。
消費税の導入の際、付加価値税を初めて日本に導入することになるため、納税者の不満を押さえるように、本来の消費税の考え方からは矛盾する制度をいろいろと入れてしまったことに対するツケが顕在化していると言えます。
特に矛盾した制度と言われるのは、消費税の非課税という制度です。
これは、
住宅の家賃や社会保険診療などについて、消費税を課税しないという制度です。
これらは生活必需品ですから、消費税を課税すると国民の負担が大きくなってしまうことを踏まえて課税しないとしたのですが、反面不動産投資家や病院には大きな負担を生じさせることになります。
というのも、非課税の収入に対応する経費については、消費税の控除が原則として認められないことになるからです。
医師会などが毎年、税制改正要望であげていますが、社会保険診療が非課税のため、医療に必要な高額な機器を購入しても、その機器に対する消費税については自腹を切る必要があり、病院の経営を圧迫していると言われます。
実質的に消費税を負担する一般消費者からすれば非課税はありがたいですが、実際の納税義務者である事業者についてはこのような致命的な問題を生じますので、医師会などが主張するように、本来これは廃止すべきということになるでしょう。
この非課税にも関連することですが、現状の日本の消費税の問題として、軽減税率があります。
軽減税率の問題は、周知の通り、線引きが難しいことです。
同じ調味料なのに、みりんだけは軽減税率にならないと言われても全く意味が分かりませんが、この線引きの問題は実は非課税も同様です。
例えば、社会福祉法人が行うような、一定の介護サービスは消費税の非課税となりますが、税理士や国税職員は社会福祉法などの専門家ではありませんので、実務上どこまで非課税になるか、常に頭を悩ませています。
こういう訳で、消費税を簡単な制度にするためには、非課税と軽減税率を廃止する必要があると考えています。
これらがなくなれば、少なくとも消費税法の解釈で混乱することはありませんので、税理士がいなくとも申告ができる位に消費税は簡単になります。
加えて、現状医師会が主張するような非課税の問題や、軽減税率がもたらしているイートイン脱税といった無意味な問題もなくなりますので、税の目的である適正公平な課税の実現という点からも、歓迎することが出来ます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。