インボイスと航空旅客の不思議:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

インボイス制度において誤解しやすい論点の一つに、航空旅客があります。

船舶やバス、そして鉄道による旅客については、その金額が3万の場合、インボイスの保存がない場合にも、その代金について消費税の控除が認められます。

交通機関を使用する顧客は非常に多いため、逐一インボイスを交付できないことからこのような取扱いになっていると考えられますが、何故か同じ交通機関でも、航空機はこの取扱いの対象から除かれています。

このため、航空旅客については、金額に関係なく航空会社の領収書の保存をしないと消費税の控除が受けられません。

さらに困ったことに、とある税務雑誌の記事によると、航空券の領収書だけを保存しても足りない場合がある、と解説されていました。

といいますのも、消費税の控除において必要になるインボイスは、サービスを受けた日が分かるものでなければないとされているからです。

航空会社の領収書には搭乗日が記載されないことも多い模様で、それだけではインボイスの要件を満たしません。
このため、この記事では領収書に加え、搭乗日が書かれた航空券なども保存すべきと解説されています。

このように、航空旅客におけるインボイスの取扱いについても、煩雑な処理が必要になる訳ですが、従業員を航空機で出張させる場合には、また別の取扱いがあります。

それは、旅費を実費精算するのではなく、出張旅費の特例で処理をする、という方法です。

出張旅費の特例とは、簡単に言えば日当の支給を意味します。

旅費や宿泊費を実費精算することが煩雑であることをもって、日当を旅費規程などで決めてそれで旅費等に充ててもらう、ということが多くあります。
日当は、それが国内出張に対するもので金額が適正であれば、消費税の控除の対象になるとされています。

インボイス制度がスタートした後もこの取扱いは変わりませんが、実費精算をせずに規程に従って支払うのが日当ですから、出張した従業員から旅費などの領収書をもらう、ということもありません。

この点を踏まえ、従業員の旅費などに充てるための日当の支給については、航空会社の領収書などの保存がなくても、帳簿に必要事項を書くことで原則消費税の控除が認められます。

こういう訳で、航空機による従業員の出張については、その旅費を実費精算するか日当として支給するかでインボイスの手間が変わります。

ただし、現状の実務においては、領収書がもらえる旅費や宿泊費については実費精算をし、それ以外に出張で発生した経費を補てんするという名目で日当が支給されることがほとんどです。

このような処理では、航空会社の領収書や航空券などの保存が必要になりますので、旅費精算などの処理の見直しも検討する必要があります。

なお、日当はあくまでも適正額でないと消費税の控除対象にはなりませんので、金額的に問題ないか、この点も検討が必要になります。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:インボイスと航空旅客の不思議 – セブンセンスグループ – 経営・会計コンサルティング

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