『弥生会計』でお馴染みの弥生株式会社様(以下、弥生)では、税理士や公認会計士の方々を対象にしたパートナープログラム「弥生PAP」(やよいぱっぷ)を運営しており、その会員の皆様向けに弥生や業界のトレンドをお届けする弥生PAPカンファレンスを年2回開催しています。
今回の弥生PAPカンファレンス 2023 秋も、オンラインとリアル会場(仙台、札幌、名古屋、東京、大阪、広島、福岡の7会場)のハイブリッドで開催されました。
これまでベルサール秋葉原で開催されていた東京会場は、今回から大手町三井ホールでの開催となり、会場の装飾も従来より大きくリニューアルされたポップな雰囲気となりました(ノベルティで配布されたトートバックはLoftで売っていそうなおしゃれなデザインで、書類の持ち運びに活躍しそうです)。
弥生PAPカンファレンス2023秋におじゃましてます。今回から会場も新しくなり、すごいおしゃれな雰囲気に!
レポートします! 1/n@yayoikk_PR pic.twitter.com/ekZ78v5DsB— 手塚佳彦:公認会計士ナビ編集長/株式会社ワイズアライアンス 代表取締役CEO (@yoshihiko_tez) October 26, 2023
今回のカンファレンスでは、弥生の新しいプロダクトの発表のほか、国税庁担当官の方によるインボイス制度と電帳法に関する留意点など、今知りたい話題が盛りだくさんに取り上げられました。
本記事では、弥生PAPカンファレンス 2023 秋 オンラインから、「弥生の次世代プロダクト構想」(弥生株式会社 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘氏)の講演をお届けします。
※記事内のスライドはすべて弥生PAPカンファレンス 2023 秋で用いられたものです。また、写真は2023年10月26日に開催された東京会場(大手町三井ホール)のものとなります。
弥生PAPカンファレンス 2023 秋 プログラム
- 弥生の次世代プロダクト構想(弥生株式会社 代表取締役社長 執行役員 前山貴弘)
- インボイス制度及び改正電子帳簿保存法への対応における留意点(国税庁担当官)
- インボイス制度/電子帳簿保存法と会計事務所の取り組み(弥生株式会社 パートナービジネス本部 営業統括部 北林 はる菜)
- 2024年会計事務所業界予測とこれからの弥生PAP制度(弥生株式会社 執行役員 パートナービジネス本部 本部長 加藤健一)
本記事の目次
新ソリューション『弥生 Next』シリーズで、つながる、はじまる、もっといい未来
大企業ができて中小企業ができなかったデータ活用を、すべての企業に
冒頭では、代表取締役の前山貴弘氏から、弥生の新ブランド「弥生 Next」についてのプレゼンテーションがありました。
弥生 Nextとは、弥生が2023年10月に発表した新ブランドであり、バックオフィス業務を完全自動化するためのサービスです。弥生は、弥生 Nextがスモールビジネスで最も頼れる経営プラットフォームになり、そこからスモールビジネスの本質的な価値が大きくひろがっていく世界を目指しています。
弥生株式会社 代表取締役社長 執行役員 前山貴弘 氏
前山代表は会計の歴史における、会計帳簿の歴史について触れました。
はじまりは粘土製の商標と容器で管理されていた帳簿。
やがて紙の帳簿、近代につながる簿記の発展へとつながります。
その後、会計ソフトが発売されますが、値段は当時の価格で数百万円、とても中小企業が手を出せるような価格帯ではありませんでした。
そして1987年に、弥生が日本ではじめて中小企業・個人事業主向けの会計ソフトウェア「弥生シリーズ」を発売し、中小企業も大企業と同じサービスを享受できるようになります。
前山代表は、これについて“Democratization of Accounting Software”、「会計ソフトを中小企業が誰でも使えるようになった」と総括します。
一方で、会計ソフトが中小企業にも普及した現代では、新たな課題が浮き彫りになっていると、前山代表は指摘します。それは、「データ活用」です。
「大企業にはデータ活用を行う専門家がいて、自社の状況を分析し、経営改善を検討したり、資金繰りを改善したりしています。一方の中小企業では専門的にデータ活用を行う人材がいないため、中小企業と大企業とのデータ活用の差が広がっています。この問題を解決しなければなりません」
そのためのアクションとして、「すべての企業がデータを活用して業績向上を促進するためのソリューションを提供していきたい」と、弥生のソリューションが目指している次の姿を語ります。
弥生 Nextが目指すのはユーザーの「業務効率化」、そして「業績向上」も!
では、弥生 Nextが目指すのは、どのような姿なのでしょうか?
まず、弥生 Nextのお客様像は、バックオフィス業務を軽減して、スモールビジネスの本質的な価値に資源を集中させたい小規模~中規模企業を想定しています。
既存製品である「弥生 24+クラウドシリーズ」「弥生 オンライン」とも差別化され、「業務プロセスの効率化に加えて、データ活用による業績向上を目指したい企業」をターゲットとしています。
また、会計のみならず給与や商取引など、会計周辺領域までカバーするようになった弥生製品がクラウドで連携され、中小企業向けのクラウドERPのようなイメージで企業の経済活動に必要なデータが連携されていきます。
そして、前山代表は、弥生 Nextではさらなる業務効率化を推し進めるのはもちろんのこと、お客様である弥生ユーザーの業績向上にも寄与したいと語ります。
業務効率化と経営の意思決定のサポートを実現する
弥生 Nextでは、データ活用で業績の向上を促すといいます。一体どのような方法で業績向上につなげるのでしょうか?
今までのデータ活用は、自社のデータを時系列で比較したり、世間一般で健全と言われている原価率、利益率や、現在の景気状況から妥当とされる業績などを自社のデータと比較したりするアプローチが行われてきました。
今回リリースになった弥生 Nextでは、個々の利用者が特定できない処理をされたユーザーの会計データから経営に関連する数値を抽出・加工されたものを活用できるようになります。
「例えば、『東京の西側で従業員5名の八百屋さん』があるとします。弥生のソフトを利用していただいている310万ユーザーの中には、同じような八百屋さんが何十事業者もいると思います。経済条件や経済規模は同じなのに、事業がうまくいっているケースと、課題があるケースがある。
どうしてこのようなギャップが生まれるのか原因を明らかにして、課題解決につなげたい。弥生のデータベースを分析し、その分析結果をユーザーの皆さまや会計事務所の皆様にフィードバックしていきたいと考えています」
弥生 Nextは、データをシームレスにつなげていくところに特徴がありますが、つながるのは自社の情報だけではありません。自社の数値を利用した管理会計だけではなく、弥生を使っている同業他社のビッグデータから抽出した経営指標をもとに、自社と他社を比較分析した結果をユーザーや会計事務所と共有して、業績向上につなげていこうとしています。
弥生 Nextが提供する3つのバリュー
では弥生 Nextを使うと具体的にどのようなよいことがあるのでしょうか。以下のスライドの、弥生 Nextが提供する3つのバリューについて、前山代表から説明がありました。
「1つ目のバリューはデジタル化を進めていくことです。会計事務所の皆様によるチェックは依然として必要となりますが、数字を作ること自体は価値を創出しないため、デジタル化によってできる限り業務を効率化し、バックオフィスの業務を究極的にはゼロにすることが目標です。
2つ目のバリューは、いつでもどこでも会社の状況を正確に把握できるようにすることです。
これらのITを活用した業務の効率化に加えて、顧問先の経営の意思決定をサポートすることが3つ目のバリューです。ソリューションを提供し、弥生を使えば業績が上がるという世界を実現していきたい。
弥生から提案されたAIによる分析内容を、弥生ユーザーご自身で解釈してアクションにうつすのは難しいかもしれません。そこで、会計事務所の皆さんに専門家としてサポートをしてもらいながら、弥生ユーザーの業績の引き上げを一緒に実現していきたいと考えています」
と、前山代表は今後の会計事務所のサービスの質の在り方についてビジョンを語りました。
弥生給与 Nextの3つの特徴とは?
弥生 Nextシリーズの第一弾として、弥生給与 Nextが2023年10月20日にリリースされました。
コンセプトは、給与計算のデジタル化です。
弥生給与 Nextの特徴は大きくわけて3つあります。
1つ目は、従業員の給与明細の作成業務などすべての業務をデジタルで行うこと。従業員の皆さんはスマートフォン上、もしくはパソコン上で、過去の給与明細も含めて見ることができるようになります。
2つ目は、年末調整を会計事務所が行っている場合の業務効率化です。弥生給与 Nextは弥生給与や達人シリーズとデータ連携ができるので、今までの業務の流れを変更することなく使えます。
3つ目は年末調整のデジタル化です。
今までは給与計算担当者と従業員との間で、年末調整に必要な資料を紙でやりとりするのが通例でした。今後は、従業員がスマートフォンやパソコンで申告内容を入力すると、そのデータが給与担当者に届きます。年末調整を含めた給与計算全体の流れがシンプルになり、顧問先の業務効率化が図られます。
2024年度には、弥生給与 Nextに続いて会計や商取引の分野のサービスのリリースも予定されており、一連のデータがつながる予定とのことでした。今後のリリースが楽しみです。
弥生のインボイス対応と製品紹介
前山代表は引き続き、2023年10月より始まったインボイス制度と、2024年1月に開始の改正電帳法に話題を移しました。
以下のスライドは、インボイス制度への対応状況についてPAP会員へアンケートを実施したものです。すでに制度が始まっていることもあり、ほとんどの会計事務所が対応済みということでした。
これに対して電帳法への対応は、まだ決めきれていない会計事務所も一定数いる状況です。
これに対して、弥生製品はインボイス制度と電帳法の両方に対応できるようになっているので活用してほしいと、改めてアナウンスがありました。
次に記帳代行支援サービスの現状について説明がありました。
記帳代行支援サービスは、会計事務所が受託している記帳代行業務を弥生が支援するサービスですが、直近の9月で契約数が一気に伸びています。記帳代行はコストに対して時間と手間がかかる業務です。記帳代行支援サービスを積極的に活用して、電帳法に対応するための時間創出のツールとして役立ててほしいとのことでした。
最後に、2023年10月20日に一斉発売された「弥生 24シリーズ+クラウド」が紹介されました。従来は「弥生 ●●シリーズ」と●●の部分にバージョンを表す表記であった製品名称に、今回から「+クラウド」が加わり、「弥生 ●●シリーズ+クラウド」との名称となりました。
デスクトップ製品でもクラウドサービスと連携が可能であり、クラウド関連機能が十分に活用できることをわかりやすくユーザーに示したいとの意図からだそうです。
今回のカンファレンスでは、弥生の新たなソリューション弥生 Nextに注目が集まりました。バックオフィスの人手不足が深刻化する中、作業や分析は弥生製品に任せて、企業は経営改善のアクションと業績向上にリソースを集中させるという道筋が見えてきました。
まずは給与計算からリリースされた弥生 Nextシリーズですが、来年からは、会計や商取引など会社の全業務についてサービスが始まるということです。バックオフィス業務の負担軽減につながるということで、今から楽しみです。
新しいサービスの登場に期待が膨らむカンファレンスとなりました。
今回の弥生PAPカンファレンスでご紹介した製品・サービスはこちら
※インボイス制度・電子帳簿保存法対応についてのご相談はこちら
弥生PAPで会計事務所経営に必要な情報を!
「弥生PAP」とは、弥生株式会社と会計事務所がパートナーシップを組み、弥生製品・サービスを活用して、中小企業、個人事業主、起業家の発展に寄与するパートナープログラムです。2023年5月時点で12,331以上の事務所が加入。税務サービスを提供する会計事務所様はぜひご加入をご検討ください。