コロナ禍も落ち着いてきたからか、ほぼ無条件に認められていたコロナ禍に伴う申告期限の延長について、近年は厳しい対応がなされています。
とりわけ、従来の取扱いとしては、申告書の余白に申告期限の延長の旨を記載していれば、特に理由を明記する必要もなくその記載だけで延長が認められましたが、現状は申告書とは別に申請書の提出が必要です。
注意すべきは、この申請書には「期限内に申告できない」理由の記載が必要とされています。このため、その理由に正当性が認められなければ、申告期限の延長が認められない可能性もあります。
このことは国税庁のホームページにも書かれていますが、令和4年度の所得税の申告をしたのに、令和3年度の所得税について申告期限の延長を申請する、といった順序が合わない対応は原則として認められません。
なぜなら、コロナ禍で申告できないから延長を認める、という制度なのに、令和4年分の所得税は申告できるのに、令和3年分は申告できないでは話がつながらないからです。
これと同様の理屈は、税理士に申告を依頼している場合にも問題になる可能性があります。
従来、ほぼ無条件に申告期限の延長が認められていた時の取扱いとして、コロナ禍で期限内申告ができない理由の一つとして、税理士側の事情も考慮されるとされていました。
典型的な事情としては、顧問税理士がコロナに感染した、といったものです。
この場合、納税者としては期限内申告ができる状況でも、税理士のサポートを受けるのは難しいので、税理士の事情を特に記載することなく申告期限は延長できるとされていました。
しかし、現状においても、「コロナ禍で税理士に~という事情があるために期限内申告が出来なかった」といった理由を申請書に書いてしまうと問題になる恐れがあります。
税理士は一人の納税者だけではなく、顧客であるその他の納税者の申告を担当していますので、ある納税者は税理士の都合により期限内申告ができなかったのに、その他の納税者は期限内申告ができた、では話がつながらないでしょう。
となると、原則としては税理士の事情以外に、期限内申告が出来なかった納税者については、その納税者にのみ妥当するコロナ禍の特有の事情を記載する必要があると考えられます。
コロナ禍は未曽有の国難でしたので、少々強引な理屈でも納税者有利の取扱いが認められると考えられてします。
しかし、現状は落ち着いた状況ですので、このような対応はどんどん制限されることになるでしょう。
何より、本来、税務の取扱いは非常に細かいため、今までのような国税の対応は許されないものです。
それだけコロナ禍が大きな国難であった、ということなのですが、このような例外はなくなる方向と言えます。
話を戻しますが、万一、延長が認められなければ無申告加算税や延滞税などのペナルティも発生しますので、取扱いや社会事情が大きく変わった現在においては、コロナ延長という特別な取扱いに頼ることなく、極力期限内申告に努めるようにするべきと考えます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。
参考サイト
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