大分落ち着いてきましたが、ここ数年、コロナ禍による緊急事態宣言が継続して出され私たちの生活に大きな影響が与えられていました。
振り返りますと、感染者が増えれば、知能指数が高くない国としては「自粛」という方針しか基本的には出せないようでしたが、自粛しても思ったように感染者が減らなかったこともあってか、振り返れば国が期待するような人流の減少はなく、買物客や通勤するサラリーマン多く見られたという印象があります。
実際のところ、感染が増えても「緊急事態」とは思っていなかった方も多いと思います。
これは国税組織も同様で、税務調査の相談事例中には、国税も緊急事態宣言について甘く考えていると思われる事例もありました。
具体的な事実関係を申しますと、他県に関与先がある税理士先生が、その他県のクライアントの税務調査を予告されたものの、日程調整した後になって、緊急事態宣言等で県外への異動について自粛要請が出された時の話。
要請ですが県外に移動できない、という合理的な理由がありますので、税務調査の延長を要請したものの、その要請について国税は受け付けなかった模様です。
法律上、税務調査は合理的な理由があればリスケできるとされていますが、国税的にはこのようなケースは合理的ではない、ということなのでしょう。
実際のところ、税務雑誌などによると、コロナ禍の税務調査については、納税者の承諾を得られた場合に限り、慎重に税務調査を行うべきであるといった指示文書が国税庁から出ているはずなのに、何故税務署レベルではこのような融通が利かない対応なのか全く意味不明です。
おそらく、国税庁の指示など見てないので、税務調査をする調査官の肌感覚として、国がコロナに対して出す緊急事態宣言は「緊急事態ではない」と思っているため、税務調査のリスケを認めないと言ったのでしょう。
税務職員も国家公務員ですから、国の指示に従う必要があります。
となると、コロナ禍という特殊な理由があり、県外の異動も自粛するよう呼びかけられた以上、当然ながらこのような事案においては、税務調査の延長を認めるべきです。
しかし、そもそも国税庁の指示文書などを現場の税務署の国税調査官は読んでいませんので、緊急事態といいながら、全く緊急感がない自分の周囲の現状と、税務調査が円滑に出来ず仕事がなくて困っている現状を踏まえた上で、自己の判断で税務調査の延長を認めないとしたのでしょう。
こういう訳で、国の機関である税務署も、コロナ禍について、そこまで厳格にとらえていなかったと解されます。
にもかかわらず、有効な対策がないからか、感染者が増えると即政治は緊急事態宣言、が繰り返されてきました。
結果として、一向にコロナ禍が収まらず、法律に則った十分な税務調査もできず国税も不満が残った。
このような無駄な時間がコロナ禍における税務調査ではなかったか。そんな気がしてなりません。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。