コロナ禍の税務調査はお互いに不幸になる:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官が税務調査対策すべてお話しします_元国税調査官・税理士_松嶋洋

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

またも感染者が増えるなど、落ち着く気配の見えないコロナ禍ですが、コロナ禍が完全に落ち着くまで、国税は全件税務調査をストップするべきと考えています。

感染状況に配慮しつつ、納税者の負担にならない範囲で承諾を得て税務調査をするといったコロナ禍における税務調査の方針が国税庁から出されていますが、こんな方針では納税者はもちろん、国税調査官も不幸になります。

コロナ禍の際、とある税務調査に立ち会った経験を思い出します。

いつものように、ろくに会社の話も聞かず、資料を見るだけの甘い税務調査だったのですが、3日間の予定なのに、調査官は2日目の中盤あたりで税務調査をストップするというのです。

この理由を聞くと、その調査官の所属税務署の職員の家族がコロナに感染したようで、その職員は濃厚接触者に当たることから、国税庁の方針で進行中の税務調査は全件ストップし、直ちに税務署に帰署しなければならないことになっているということでした。

その調査官の口調を踏まえると、税務調査をストップするので納税者にとっては都合がいいだろう、位の感覚だったのでしょうが、中止されると困るのは納税者です。

税務調査のための準備を数か月前から行っていますし、貴重な仕事の時間を差し引いて税務調査に立ち会っている訳ですから、中止などとんでもない、と会社は怒りました。

加えて、濃厚接触者が税務署にいるにせよ、調査官はコロナではないため、このまま税務調査を継続するか、税務調査を中止するのではなく終了させるかのどちらかにすべきだ、と主張しました。

最終的には、1.5日間という短い時間で十分な検討もしていないのに、調査官は「会社の処理は基本的に問題ないので税務調査を終了します。」と言って税務調査を終えました。

税務調査を終了してもらうのはありがたい話ですが、適正公平な課税の実現のための税務調査がこのような形で十分に実施できなくなるのであれば、税務行政としては大きな問題です。

とりわけ、今は一回税務調査をした年度については、再度の税務調査をすることが制限されます。

結果として、十分な税務調査ができないままに終了するとすれば、適正に是正されるべき不正が発見されないことになり、悪質な脱税者が得をする可能性もあります。

このように、コロナ禍の税務調査は中断せざるを得ないリスクがある訳で、結果として税務調査が不十分にならざるを得ません。

となると、調査官にとっても不本意ですから、コロナ禍が完全に終わるまでは税務調査を全件取りやめ、落ち着いてから再開するべきでしょう。

もちろん、全件ストップなら、脱税行為が見過ごされる可能性がありますので、国税の時効についても延長するなど特例的な措置を法律で設ける必要があります。

しかし、残念なことに、政治家に直談判するなど、法改正をするための度胸も行動力も根性にも国税にはありません。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:コロナ禍の税務調査はお互いに不幸になる|セブンセンスグループ

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