持続化給付金詐欺で元職員が逮捕されるなど、国税職員の不祥事が最近多いですが、コロナ禍前に比して、件数はもちろん、悪質性も大きくアップしています。
先の通り持続化給付金の詐欺に加担したり、不正に消費税の還付申告をしたり、大麻を栽培したりと、明確な犯罪行為に手を染めている訳で、国税の上層部が責任を逃れるときに使う、「極めて遺憾」では対処できない状況になっています。
このような不祥事の悪化の原因について、コロナ禍前にとある全国紙に国税の幹部職員に対して取材した内容として、コロナ禍で飲み会を実施できないから、と述べられていました。
コロナ禍前は飲み会で上司が部下職員の悩みを聞くなどしてメンタル面もサポートできたのに、それができないために上司の目が届かず、結果として不祥事が見過ごされているというのです。
全国紙なので、もう少しきちんとした取材をするべきと思うのですが、全くの筋違いの内容です。
私の現職時代を振り返りますと、上司が部下のサポートをするために飲み会を開く、ということはほとんどありませんでした。
国税の飲み会は、基本的には幹部職員に対するボヤキとか、酒を飲んで気持ちよくなりたいとか、このような目的をもって上司や先輩職員を気持ちよくさせるためのものです。
このため、親身になって部下の話を聞く、ということは国税の飲み会ではほとんどなく、基本的には先輩や上司に対する接待の一環で行われます。
このような接待が目的ですから、むしろ飲み会で体を壊す職員も多かった、と記憶しています。
残念なことに、この接待が人事評価に大きな影響を与えますので、お酒が得意でない職員も、それに参加しない訳にはいきません。
結果として、健全な職員にとってみれば、飲み会が少なくなることはむしろ好ましい話であり、最近報道されるような悪質性の高い不祥事の原因に、コロナ禍による飲み会の不足は全く関係ないと考えられます。
そもそも、国税の幹部職員は人事管理といった仕事が嫌いですし、ろくな勉強をしていないためコンプライアンス意識も乏しいことが多いですから、基本的に部下職員を監督していません。
しかし、コロナ禍により、在宅勤務などを認めざるを得ない状況になりましたから、より目が届かなくなったため、このような悪質性の高い不祥事が増えたというのが正しい理解でしょう。
加えて、在宅勤務も導入して、職員の自由な時間ができたことも大きな理由でしょう。
暇な時間を活用してお金を稼ぎたい、と思うのが人情ですから、「在宅勤務」しているふりをして、お金になる「犯罪行為」に手を染める職員が増えたと解されます。
いずれにしても、国税の不祥事は今後も止まることはないでしょう。残念なことに、国税組織にこれを適正に監督する力はありません。
国税組織の言い訳に騙されず、税務行政に対して厳しい目を向けるべきと考えます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。