無償返還の届出を出していない場合の相続税申告:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

土地の賃貸借により借地権を設定した場合、原則として貸主は土地の一部を借主に譲渡したとされ、譲渡所得の課税問題が生じます。

しかし、この借地権の課税については、「無償返還の届出」を税務署に提出することで原則として回避することができます。

このため、例えば社長の土地を会社が借りて建物を建てるといった場合、借地権の課税を避けるために、会社は社長と連名で無償返還の届出を提出することになります。

この取扱いは常識なのですが、実務では無償返還の届出が提出されていないことが多くあります。

この理由として、所得税や法人税の国税の担当者が、借地権について基本知らないので借地権の課税についてそれほど厳しくないことはもちろん、最悪国税から問題視されたとしても、そのタイミングで無償返還の届出を提出すれば問題ないとされていることなどが挙げられます。

このため、法人税や所得税は無償返還の届出を出していなくともあまり問題にならないのですが、相続税においては疑問が生じます。

相続税の計算上、借地権が関係する土地の評価は、無償返還の届出が出ている場合とそうでない場合とで大きく異なるからです。

具体例を挙げて説明しますと、上記の例のように、社長が土地を自社に貸していた場合で、社長に相続が発生したとします。
社長と会社は後日提出でもOKなので無償返還の届出を出していないだけですが、この場合、社長の土地は無償返還の届出を出しているとして評価するのか、若しくは無償返還の届出を出していないとして評価するのか疑問が生じます。

結論から申し上げますと、後者で評価するとされています。
しかし、そうなると法人税や所得税は無償返還を出すという前提で経理処理をしていますから、無償返還の届出を出しているという法人税や所得税と、無償返還の届出を出していないとされる相続税の取扱いに矛盾が生じます。

このため混乱する訳ですが、このような矛盾が生じたとしても、所得に対して課税される法人税や所得税と、相続財産について課税される相続税は種類の違う税金ですから、取扱いが変わっても問題ないという整理になります。

このようなことを申し上げると、相続税の取扱いとして、無償返還の届出を出していないとされるのであれば、遡って法人税や所得税についても無償返還の届出を出していないとされ借地権の課税が行われるのではないか、といった質問も受けます。

この点、税金には申告期限から原則5年という時効があるため、原則問題になりません。

と言いますのも、法人税や所得税の場合、借地権はその借地権を設定する契約時に課税されることとされているため、契約した年度の申告期限から、原則として5年経過していれば遡及して課税されるようなことはありません。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:無償返還の届出を出していない場合の相続税申告|セブンセンスグループ

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