コロナ禍という国難に対して非常に残念な話ですが、予想された通り、持続化給付金の詐欺が最近多数報道されるようになってきました。
迅速な給付という目的はあるにせよ、持続化給付金のチェックが大甘であることはよく知られていましたので、起こるべくして起こった人災と言わざるを得ません。
とりわけ残念なこととして、那覇の事案ですが、このような詐欺にかかわっている容疑がある税理士についての報道もありました。
報道によると、この税理士は事業実績のない者の虚偽の確定申告などの書類を用意させ、給付手続きを行っていたようです。
本当なら当然許せる話ではありませんが、更に腹立たしいのは、給付された給付金の一部を「成功報酬」で貰っていたことです。
給付金や補助金は、顧客からお金をとりやすいため成功報酬型のビジネスが横行していますが、持続化給付金は他の補助金などとは異なり審査が甘く、かつ税理士の手間などほとんどかかりません。
にもかかわらず、「成功」と言って高い報酬をとったのなら、残念な限りです。
仮にこの報道が真実であれば、この税理士には免許停止など厳罰が望まれますが、それと同時にこのような税理士の実態を、国税や税理士会がなぜ把握できなかったのか、監督体制についても大いに疑問が残ります。
といいますのも、この税理士の事務所は、持続化給付金目当ての客で行列ができていた、と報道されているからです。
税理士事務所に行列ができるなど、常識としてあり得ません。
となれば、税理士会や税務署にも何らかの情報は入っていたと個人的には考えています。
とりわけ、地方の税理士会においては、「税理士が所属する支部の会合に出席するのは当然」といった慣習が残っており、その支部の税理士はすべて顔見知り、といった状況もあり得ると聞いています。
このことを踏まえれば、「行列のできる税理士事務所」の実態を税理士会が把握できていない、などということはあり得ないと考えられます。
実際のところ、税理士会も国税も、税理士の非行を防止するなどと言いながら、そのチェックは基本的にあってないようなものと考えています。
税理士の懲戒権限は国税にありますから、税理士会は税理士法のリスクについて、税理士に注意することはあっても最終的には「我関せず」です。
一方で、国税は税金を取るのがメインですから、その実、税金を追徴できない税理士の監督に力を入れていません。
実際、税理士の脱税や名義貸しなどの露骨な違法行為がある場合に限り、国税は税理士の懲戒を行っている印象があります。
このような税理士に対する甘い監督も、持続化給付金詐欺を助長させた一因であるはずです。今後は税理士会を中心に、税理士に対する監督を強める必要があると考えます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。