交通費の実費負担に係る 源泉徴収の取扱いが変わる?:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

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本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

税理士やデザイナーなど、一定のフリーランサーである個人に報酬を支払うような場合、原則として源泉徴収が必要になります。

この場合の源泉所得税は報酬に一定割合を乗じた金額とされていますが、このとき問題になるのは交通費などの実費部分です。
実費部分を支払先が負担する場合、支払を受ける個人からすれば、交際費などの実費は報酬とは別ですから、源泉徴収の対象になるのはこれらを除いた報酬の純額になると考えるはずです。

しかし、現行の取扱いは、その実費部分を支払先が直接交通機関などに支払った場合を除き、交通費等は報酬に含まれて源泉所得税の計算対象になるとしています。
即ち、源泉「所得」税などと言いながら、自分の「所得」とは言えない交通費の実費部分についても、源泉徴収の対象になるとされているのです。

確定申告で源泉所得税は精算されるとはいえ、源泉徴収されると、その分収入が減りますので、支払いを受ける側としては源泉徴収されない方が都合いいことは間違いありません。
しかし、支払者が交通機関や宿泊施設の予約をとり、直接お金を払う、ということは実務ではほとんどないでしょう。
むしろ、いったん報酬の支払いを受ける個人で交通費などの実費を支払い、後日精算を依頼することが通例です。

しかし、現行の取扱いでは交通費や宿泊費は満額で支払わざるを得ないのに、源泉徴収後の金額しかもらえませんので、源泉所得税分、確定申告をするまでは自腹を切らなければならないことになります。

一方で、会社で雇用されるサラリーマンなどの従業員の給与については、通勤手当は所得税の非課税になりますし、従業員が立て替えた経費についても、勤務先で実費精算され原則として源泉徴収の対象にはなりません。
この従業員の源泉徴収の取扱いと、上記の個人のフリーランサーの取扱いは公平ではない、といった指摘が従来からありました。

このことを踏まえ、とある税務雑誌の記事によると、フリーランサーである個人が立て替える交通費等の実費についても、従業員の給与と同様に、源泉徴収の対象から除く方向で国税庁が検討しているようです。
執筆時現在、国税庁から明確な見解は出ていませんが、フリーランサーが増えている現状を踏まえ、明確な要件緩和が期待されます。

なお、具体的な手続きについては、上記の税務雑誌によると、立替払いをしたことが検証できるよう、報酬の支払者の名前(立替払いした交通費等の実際の負担者)や、支払った日付などが記載された領収書を発行してもらい、その領収書と引き換えに精算をする必要があると解説されています。

となると、領収書の発行を受けなかった場合や、「上様」名義の領収書では、この取扱いの対象にはならないと想定されます。

自分の経費の場合、領収書の記載に国税は厳しくありませんが、立替払いには厳しいため、仮にこの取扱いが国税庁から認められた場合には注意してください。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:交通費の実費負担に係る 源泉徴収の取扱いが変わる?|セブンセンスグループ

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