役員報酬の日割は認められない:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

私は数多くの税理士から税務の質問を受けていますが、よく質問を受けることの一つに、役員報酬があります。

税理士の顧客の多くが中小企業であり、その中小企業が節税を考える上で真っ先に考慮すべきは役員報酬ですが、現状の役員報酬の税制は「毎月同じ金額を支給しないと経費にならない」という、常識がない仕組みを前提としています。
結果として、経費になる役員報酬の範囲が問題になり、多くの疑義が生じています。

とりわけよく問題になることとして、役員報酬の日割があります。

従業員給料は「支払うべき原因が発生した」タイミングで費用とする発生主義の原則がとられています。給与の支給は、例えば20日締めの翌月5日払い、といった形で20日までの分を翌月の5日に払うといった処理になります。

ただし、決算は原則月の末日です。このケースでは21日から末日までに「支払うべき原因が発生」しているため、決算においては21日から決算日である月の末日までの日割の従業員給与について、費用にすることができます。

一方で、役員報酬については、従業員給与とは異なり、日割の給与を経費にすることはできないと解説されています。
この理由として、従業員給与は「雇用契約」に基づいて支給される反面、役員の給与は「委任契約」に基づいて支給されるためと解説されています。

その解説によると、「雇用契約」は期間が経過すれば給与を支払う義務が発生するため日割の給与も発生する反面、「委任契約」は本来委任事務が終わらないと請求できないという原則があるため、日割の給与を認めることはできないと説明されています。

しかしながら、税理士の実務でこれらの契約の違いを意識することはほとんどありません。
従業員給与も役員報酬も、同じように締日と支給日を決めて支給されていますし、税法の取扱いとして、同じ給与所得で課税されるからです。
このため、支払先が従業員と役員で異なるとしても、日割の給与の処理は変わらないと考えてしまいます。

加えて、「委任契約」や「雇用契約」の話は民商法の解釈ですが、税理士試験には民商法は一切出ませんので、「委任契約」と「雇用契約」の違いについて、税理士は勉強していません。
このため、両者の相違も正確には理解できていない場合が多いですから、気付かないうちにミスをしている税理士も多くいると思われます。

何より、融通が利かず、判断が難しい現状の役員報酬の税制に、批判的な国税職員は少なくありません。
加えて、役員報酬の日割金額を認めても、それは大きな金額ではありませんので、調査官はわざわざ是正させる必要性を感じていないはずです。

役員報酬の税制はおかしなことばかりですが、役員報酬の日割についても国税の温情が期待されます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

  • 元国税調査官・税理士 松嶋洋.com
  • 元国税調査官・税理士 松嶋洋による税務調査対策に効果的なノウハウを無料で公開中!

著書

引用元:役員報酬の日割は認められない|セブンセンスグループ

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