インターネットが社会に浸透してから長いですが、今では税理士の飯のタネに当たる税法や通達が、インターネットで無料かつ手軽に見ることができる時代になりました。
こうなると、法規集や通達をわざわざ紙で買う実益はないと考える方も多く、実際のところ業界で著名な弁護士も法規集を買うことを止めた、と言っていました。
とりわけ、税法は毎年改正されますから、法規集を買うとすれば毎年購入する必要があり、コストが馬鹿にならないことはもちろん、場所も取るため、インターネットで足りる、というのでしょう。
あくまでも個人的な意見ですが、このような時代にあっても、私は税法や通達の法規集を買い続けます。
その理由は、インターネットで条文を読むと、パソコンという媒体の都合上、読み落としが多く発生するからです。とりわけ、税法は条文が長く、かつカッコ書きなど読みにくい部分が多いですから、紙で細かく読まないと致命的なミスにつながります。
加えて、税理士の責任は無限責任のため、「知りませんでした」「ミスしました」は許されない世界です。
近年は税理士のミスに裁判所も厳しいですから、条文を本当に隅から隅まで読まないと、そのまま高額の損害賠償請求につながる可能性があります。
私は臆病な性格なので、これからも紙ベース法規集を読まないと、到底安心できません。
とりわけ、消費税法や租税特別措置法に多いのですが、近年は税法に致命的なミスにつながる落し穴が増えたという印象があります。
事実、私も記憶していた内容が、税法の条文に合っておらず、冷や汗をかいたことがあります。
このため、今まで以上に条文を細かく読まなければならず、紙の法規集にマーカーを引き、カッコ書きを区分するといった、よりアナログで地道に条文を読むことが求められている時代なのです。
にもかかわらず、法規集を買わなかったり、税法をそもそも読まなかったりするなど、条文を甘く見る専門家が多いのには驚かされます。
私が以前勤めていた会計事務所の所長税理士は、
「税法を読むのは生産性が低いため趣味であり、仕事ではない。時間があれば会計処理をやりなさい。」
などと宣っていました。
このような、税法を軽んじる専門家が多いのが残念ですが、これからはこのようないい加減な対応は通用しなくなるはずです。
こういう訳で、私は毎年法規集を購入し、気を引き締めています。専門家の方はもちろん、税法を全く勉強しない、国税職員の方にも、法規集の定期購入をお薦めします。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。