ふるさと納税訴訟と裁判所の忖度:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

先日、注目を集めていた泉佐野市のふるさと納税について、国の処分が違法であるとの最高裁判決がなされました。

この裁判においては、ふるさと納税の制限が2019年6月からスタートしたのに、それ以前の寄附の募集を問題にして、泉佐野市をふるさと納税の対象から除外することが問題とされたのです。

ふるさと納税については、従来から高額すぎる返礼品が問題になっていました。
本来、出身地などのふるさと応援するための制度であるのに、高額な返礼品を得ることを目的に、寄附が集まっていたという現実があります。
結果として、寄附が集まる自治体は税収が増える反面、寄付者の多い東京や神奈川などは税収が下がるため、問題になっていました。

この問題点はふるさと納税がスタートしてから、常に言われてきたことですが、総務省は返礼品を寄附額の3割に留めたり、地場産品にしたりすることを要請するに止まり、法律において規制が入ったのは2019年6月からでした。
このため、常識的にはそれまでの返礼品は問題にならないはずです。

この点を踏まえ、泉佐野市は「『100億円還元』閉店キャンペーン」と題し、2019年2月1日から3月31日までの限定で、Amazonギフト券を返礼するという、露骨な返礼品の大盤振る舞いを行ったのです。

総務省としては、今までも要請に応じず、かつ高額な返礼品を給付してきたことに加え、反省を示さないまま露骨なことをやっている泉佐野市が面白くなかったのでしょう。
過去の経緯も取り上げて、ふるさと納税の対象から泉佐野市を除外する、としたのがこの裁判の経緯です。

このような後出しじゃんけん的な処分は、法律のあり方としては容認できるものではありませんが、過去の経緯を見ると、税制改正後の取扱いを遡及して適用した国税の課税処分について、合法とされた最高裁判例があります。

本件も、最高裁までは総務省が正しいという判断がなされていました。
このような判断がなされる理由は、三権分立と言いながら、裁判所が総務省(国)を忖度しているからに相違ありません。

とりわけ、厳格に法律を適用すべき税に関し、裁判所は国に忖度することが特に多いですから、最高裁で泉佐野市が勝ったのは、非常に画期的と言われます。
最高裁で判断が逆転した理由について、専門家の間では、本件の最高裁の裁判長が国税に対する税務訴訟で実績を残してきた弁護士であったことが影響していると噂されています。

私見ですが、国税と戦い、忖度により不合理な判断も受けて経験がある裁判長であったため、多くの裁判で見られる忖度ではなく、正しい法解釈と常識に照らした判決がなされたと想定されます。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

引用元:ふるさと納税訴訟と裁判所の忖度|セブンセンスグループ

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