近年は、今後のトラブルなどに備える目的で、電話などの会話を録音されることも多くなりました。
それだけ、人々の権利意識が高まっているということなのでしょうが、こと税務調査については、未だに録音することが国税から禁止されています。
税務調査の録音を禁止する根拠として、国税が絶えず説明するのは守秘義務違反です。
国税には国家公務員法の守秘義務と、国税通則法の守秘義務の二重の守秘義務が課されており、国税の守秘義務は非常に大きなもの言われています。
このような重い守秘義務があるからこそ、データが外部流出すると困るため、その防止策として税務調査の録音を禁止すると調査官は説明します。
とは言え、税務調査の録音データの流出について、それが守秘義務に抵触するというのは、論理的ではありません。なぜなら、流出させるのは国税ではなく、税務調査を録音した納税者以外にあり得ないからです。
録音データを持っていないので、流出させようがない国税が、納税者が行った外部流出の責任を取るというのは違和感しかありません。
実際のところ、トラブル防止のため税務調査の録音がしたいと考える企業に対し、国税調査官がいつもやるように、「外部流出の問題が生じるので録音は禁止されます」といった説明をしても、全く理解してもらえません。
前述したとおり、録音データの外部流出があった場合、その責任は原則として国税にはなく、自社にあることは明白だからです。
こういう訳で、私たち税理士が、国税の指導に従って、税務調査時の録音を禁止にしようとしても大変難しいのですが、そもそも国税が録音を禁止する本音は、自分たちの失言を防止するという非常に利己的なものです。
このような利己的な目的を隠ぺいするために、直接関係ない「守秘義務」を持ちだすので、ルールが極めて複雑で分かりづらくなるとともに、フェアではないため納税者の不信感にもつながります。
実際のところ、税務調査は命の次に大切なお金が絡むものですから、自ずと国税とトラブルになることが多い訳で、無用なトラブルを防止するためには、録音が当然に必要になるはずです。
このため、守秘義務といったケチ臭い言い訳を使わず、録音されても怖くないよう、自分たちの発言に注意して税務調査を行うことが妥当と考えます。
何より、今はスマホなどで簡単に録音ができる訳ですから、税務調査の録音を禁止するというのは現実的ではありません。
時代としてもトラブル防止のため録音されることが多い訳ですから、税務調査についても録音を解禁すべき時期に来ていると考えます。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。