『弥生会計』でお馴染みの弥生株式会社様(以下、弥生)では、税理士や公認会計士の方々を対象にしたパートナープログラム「弥生PAP」(やよいぱっぷ)を運営しており、その会員の皆様向けに弥生や業界のトレンドをお届けする弥生PAPカンファレンスを年2回開催しています。
今回の弥生PAPカンファレンス 2023 春も、オンラインとリアル会場(仙台、札幌、名古屋、東京、大阪、広島、福岡の7会場)のハイブリッドで開催されました。
東京会場は満席となるほどの盛況ぶりであり、また、オンラインでは、事務所の所長や代表者のみならず、職員の皆様も多数ご視聴されていたかと思います。会計事務所全体で、法令改正に対する対応や課題を共有する良い機会になったのではないでしょうか。
今回のカンファレンスでは、冒頭にて、2023年4月に代表取締役に就任した前山貴弘氏から、新経営体制について言及がありました。
また、2023年10月に適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)、2024年1月に改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)と、重要な法令改正が間近に迫っていることから、事業者や会計事務所を対象としたアンケート調査結果や、電帳法とインボイス制度対応ソリューションの紹介や、具体的な業務フローを想定しての製品デモンストレーションなどが行われました。
本記事では、前編・後編の2回にわたり、弥生PAPカンファレンス 2023 春の模様を、お届けします(オンラインは、2023年6月13日、6月26日、7月7日の3日間にわたり開催)。
※記事内のスライドはすべて弥生PAPカンファレンス 2023 春で用いられたものです。また、写真は2023年6月15日に開催された東京会場(ベルサール秋葉原)のものとなります。
弥生PAPカンファレンス 2023 春 プログラム
- 弥生の現況とこれから(弥生株式会社 代表取締役 社長執行役員 前山貴弘)
- 弥生の電帳法/インボイス制度対応 最新情報第1部(弥生株式会社 パートナービジネス本部 営業統括部 北林はる菜)
- 弥生の電帳法/インボイス制度対応 最新情報第2部(弥生株式会社 パートナービジネス本部 営業統括部 鄭詩穎)
- インボイス制度/電帳法対応、その先へ 弥生が目指す 会計事務所と歩む未来(弥生株式会社 パートナービジネス本部 本部長 加藤健一)
本記事の目次
デジタル化でより付加価値の高い業務へシフト
2023年4月代表取締役に前山氏が就任。経営体制を刷新
冒頭では、2023年4月に代表取締役に就任した前山貴弘氏から、弥生の新経営体制や経営状況についてのプレゼンテーションがありました。
弥生株式会社 代表取締役社長執行役員 前山貴弘 氏
2023年4月1日から弥生の経営体制が大きく変更になりました。新たに代表取締役社長執行役員に就任されたのは、前山貴弘氏です。前山代表は、公認会計士で、PwC税理士法人からキャリアをスタートされています。
次に、8名の取締役、執行役員による新たな経営チームが紹介されました。中でも目を引くのは、元日本マイクロソフト社長であり、アメリカのマイクロソフトでも上級幹部を務めていた平野拓也会長が、2023年4月1日から弥生の取締役会長に就任されたことです。平野会長は、日米のソフトビジネスの最前線を走ってきた方です。弥生のお客様に対する価値提供に、大きく貢献することが期待されています。
弥生PAP会員、記帳代行支援サービスともに順調に推移
次に弥生のビジネスの現況について、前山代表から報告がありました。弥生PAP会員数は、引き続き順調に増加しています。
記帳代行支援サービスも、導入事務所数、顧問先ライセンス数ともに右肩上がりで増加しています。特にスライド右側の「証憑データ化明細数/月間」では、確定申告時期の3月は突出して利用数が増加しています。記帳代行支援サービスが、確定申告時期の記帳代行業務の負荷軽減に貢献している様子が伺えます。
インボイス制度について事業者・会計事務所にアンケート調査
いよいよ今年10月からインボイス制度、来年1月から電子取引のデータ保存義務化が始まります。そこで、弥生は、事業者と会計事務所それぞれに、インボイス制度に関するアンケート調査を実施しました。
まず、事業者(法人)に行った直近のアンケート調査結果では、8割の方がインボイス制度の準備をしていると回答しました。
続いて、会計事務所のインボイス制度の対応状況に関するアンケート結果が発表されました。顧問先から問い合わせが増加しており、顧問先のインボイス制度に対する関心が高まっている様子が読み取れます。
また、顧問先から会計事務所への問い合わせの状況ですが、より具体的な問い合わせが増えているようです。会計事務所が顧問先に対して具体的なソリューションを提供する段階に入りました。
また、事業者に、インボイス制度について誰に相談するか質問したところ、「会計事務所/税理士」に相談するという回答が圧倒的な割合を占めています。会計事務所や税理士に対する期待が高まっています。
インボイス制度を支援する弥生の製品・サービス
続いて前山代表から、製品・サービスについて説明がありました。弥生製品はインボイス制度と改正電帳法に対応しているため、このまま安心して2023年10月を迎えてほしいとコメントされました。
2023年6月から記帳代行の顧問先においてもスマート証憑管理の利用が可能になりました。
「今回は、単なる法令改正ではなく、業務のデジタル化や業務フローの見直しを行う機会でもあります。会計事務所や事業者の皆様が、より付加価値の高い業務へシフトしていただくために、弥生は100%皆様のお手伝いをしていきたい」と、前山代表は発言されました。
事業支援サービスも強化
弥生は、事業支援サービスとして、4つのサービスをリリースしています。
- 「起業・開業ナビ」:会社設立の登記申請や税務署に提出する登記申請サポート
- 「資金調達ナビ」:資金融資や、補助金、助成金に関する情報の提供
- 「税理士紹介ナビ」:税理士の紹介
- 「事業承継ナビ」:小規模事業者の事業承継のお手伝い
これらのサービスは随時新たな機能が追加されています。
税理士紹介ナビは、今年1年間で、2,000件を超える送客が見込まれています。
最後に「弥生株式会社は、法令対応、業務効率化と同時に、お客様の事業もサポートしながら、弥生PAP会員の皆様とともにより輝かしい未来を築いていきたい」と述べ、前山氏はセッションを締めくくりました。
法令改正には「スマート証憑管理」と「記帳代行支援サービス」で対応。補助金申請で利用料金が4分の1に
電帳法とインボイス制度が会計事務所に与える影響
弥生株式会社 パートナービジネス本部 営業統括部 北林はる菜 氏
改正電帳法やインボイス制度施行の影響を受けて、会計事務所の工数増加が予想されています。では、会計事務所は、工数増加にどのように対応すれば良いのでしょうか?
北林はる菜氏は、はじめに会計事務所が抱える課題を分析します。
次のスライドは、インボイス制度でどれぐらいの工数とコストが増加するのか試算しています。
インボイス制度開始前であれば、1社あたり5,000円のコストがかかっていました(1社あたり200仕訳、1仕訳の手入力にかかる時間が1分、時給1,500円の人が作業した場合で試算)。
もしインボイス制度開始以降も、手入力を続けて、青字で記載した確認項目を人が行うと仮定すると、作業時間とコストが倍になってしまいます。
工数増加への対応は、会計事務所によって二極化していると、北林氏は分析します。
ここで、法令対応を起点に事務所の経営課題に取り組んでいる弥生PAP会員、税理士法人服部会計事務所の取り組みが紹介されました。所長税理士、服部秀樹氏へのインタビュー内容は以下の通りです。
スマート証憑管理の4つのポイント
2023年1月にリリースされた「スマート証憑管理」。スマート証憑管理の導入で、改正電帳法やインボイス制度対応だけではなく、仕訳連携による入力の効率化や業務効率化なども行うことができます。
スマート証憑管理の4つのポイントについて、北林氏から説明がありました。
自計化されている顧問先のスマート証憑管理の運用例
以下は、自計化がされている顧問先がスマート証憑管理を使用する場合の説明のスライドです。弥生販売もしくはMISOCAで発行した証憑控えは、自動的にスマート証憑管理に保管されます。そのほか業務効率化につながる機能についても説明がされました。
記帳代行を受託している顧問先のスマート証憑管理の運用例
ここで、6月から利用可能となった、会計事務所が記帳代行を受託している顧問先(弥生製品を持っていない顧問先)がスマート証憑管理を活用する流れについて説明がありました。
記帳代行を受託している顧問先がスマート証憑管理を利用する場合、2つのパターンが想定されます。
ケース1は、顧問先がスマート証憑管理に証憑をアップロード、ケース2は会計事務所がアップロードするというものです。
※いずれも会計事務所が顧問先に記帳代行ライセンスを付与する必要があります。
まず、ケース1の業務の流れは、以下のスライドの通りです。会計事務所では、仕訳の確認修正作業のみ行います。
ケース2は、顧問先からわたされた証憑を会計事務所がスキャンし、証憑データ化サービスにアップロードします。顧問先は、スマート証憑管理を使って、アップロードされた証憑を検索、閲覧できるようになります。
法令改正による工数増加に伴い増加するコストを試算
以上2つのケースが紹介されましたが、どの業務フローを選択するかによって、会計事務所側の工数が変化します。場合によっては、顧問料の見直しが必要になる可能性もあります。
まずケース1の顧問先がアップロードまでするパターンでは、コストの変化は以下の通りです。手入力を続けるとコストはおよそ2倍になり、弥生のサービスを使えばコストは下がります。
次にケース2の、会計事務所が紙証憑をスキャンし、アップロードするというパターンです。こちらも、手入力を続けるとコストがおよそ2倍になります。また、弥生の記帳代行支援サービスを使ったとしても、コストは増加していますので顧問料の見直しが課題となります。
顧問料の値上げが難しいクライアントについては、資料の受け渡しの方法をケース1でできないかなど、顧問先とのやり取りを見直してみる必要がありそうです。
IT導入補助金で利用料金が4分の1に
記帳代行顧問先がスマート証憑管理を利用するためには、各顧問先に対して記帳代行支援サービスのライセンスの割当が必要になります。記帳代行支援サービスの利用料金については以下のとおりです。
一方で、スマート証憑管理や記帳代行支援サービスの利用に際して申請ができるIT導入補助金について、北林氏から説明がありました。弥生株式会社と提携している、株式会社ライトアップ社が代行申請をしているので、活用してほしいと、アナウンスがありました。
IT導入補助金を活用することで、記帳代行支援サービスが4分の1の価格で利用することができます。
最後に、法令対応への方針が決まっていないという悩みや、どういったサービスを使えばいいのかわからないといった悩みを抱えている場合は、弥生株式会社でオンライン無料相談会を開催しているので気軽に相談してほしいと述べ、北林氏はセッションを締めくくりました。
後編では、スマート証憑管理のデモンストレーション、法令改正対応に取り組んでいる弥生PAP会員の事例紹介、制度対応のまとめ、今後の弥生の製品リリース計画などについてお届けします!
→会計事務所の工数を削減。スマート証憑管理のデモンストレーションや、デジタルインボイスを見据えた今後の弥生製品計画など:弥生PAPカンファレンス 2023 春レポート_後編【PR】
今回の弥生PAPカンファレンスでご紹介したサービスはこちら
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「弥生PAP」とは、弥生株式会社と会計事務所がパートナーシップを組み、弥生製品・サービスを活用して、中小企業、個人事業主、起業家の発展に寄与するパートナープログラムです。2022年4月時点で11,600以上の事務所が加入。税務サービスを提供する会計事務所様はぜひご加入をご検討ください。