国税は武漢肺炎の影響により、承諾がない限り税務調査を自粛していますが、税務調査を自粛するとなると、国税調査官にほとんど仕事がないという問題が発生します。
現職時代を振り返りますと、税務調査に従事する国税調査官の年末休暇は、民間企業に比して相当早い12月20日頃からスタートしていました。
この理由は、企業が忙しい年末年始については、原則として税務調査に行けないからです。
税務調査ができない以上仕事にもならないので、早々に休暇に入るのが国税の常識なのです。
このため、コロナ禍の当初、仕事がない調査官が何をやっていたのか疑問がありますが、税務調査の在宅研修を行っていたようです。
コロナ禍が始まったタイミングでは、仕事がない調査官のために、国税庁が在宅研修用のカリキュラムをたくさん作ったという話がありました。
しかし、当然ながらこれは職員のレベルアップが目的ではなく、仕事をしないのに血税から給料をもらうとなると問題がありますから、仕事をしている言い訳を作ることが目的です。
実際のところ、「研修は寝るもの」というのが国税の文化です。
和光市にある税務大学校の研修も、多くの研修生が寝ていますし、税務署で行われる研修も、聞くふりをして眠っている職員が散見されます。
となれば、在宅研修に従事しています、などと言っても、その実真面目に受けておらず、眠っていたことがほとんどかと考えます。
こういう事情がありますので、もっと効果的な業務に仕事がない国税調査官を従事させるべきと思っていたのですが、現状問題になっている、持続化給付金の審査をやらせるべきだったと考えています。
持続化給付金については、現状詐欺が横行していたというニュースが横行していますが、それはアルバイトが審査しているといった、相当にいい加減な給付がなされていたからです。
国税調査官は数字の改竄を発見したり、申告書などを審査したりするのがメインの仕事ですから、彼らが持続化給付金の審査をするだけで、このような問題が相当部分解決できたはずです。
しかし、このような対応はなされませんでした。その理由は、持続化給付金を所管する経済産業省と、国税を所管する財務省の仲が悪いからです。
この二つの省庁は、一方が経済成長のための減税を求め、他方が財政規律のための増税を求めるため、税制改正の際毎度喧嘩します。
このような関係性がありますから、互いに協力することが難しい訳で、その結果ますます不合理な実務が進んでいくことになります。
多くは望みませんが、経産省は最低限、持続化給付金の支給対象者の情報は国税に流してもらいたいと考えています。
必ず、持続化給付金の不正受給かつ無申告の者がいるはずですから。
税務調査対策ノウハウを無料で公開中!
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋による税務調査対策に効果的なノウハウをまとめたPDFを無料で公開中!ご興味のある方は下記サイトよりダウンロードください。
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。