「取り敢えずの期限内申告」と税理士法違反(2):元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

本記事は元国税調査官・税理士 松嶋洋がセブンセンスグループのメルマガに掲載したコンテンツの再掲載です。記事内で言及されている法令ならびにその解釈はメルマガ掲載時のものとなります。

新型コロナウイルスの影響で、現状国税は十分な税務調査をできていませんが、この状況は今後もしばらく続く見込みのようです。

このため、納税者から口頭で明確な同意が得られた場合に限って税務調査を行うとともに、税務調査を実施するにしても納税者の事情に配慮する、といった対応が今後も継続されると見込まれています。

ここでいう納税者の事情について、押さえておきたいことの一つにテレワークの導入があります。

とある税務雑誌によると、テレワークにより、経理担当者が出社しない日がある場合には、出社日まで税務調査を延期できるとされています。

しかも、当分の間の対応ということですが、税務調査のためにわざわざ経理担当者が別途出社日を設ける必要はなく、テレワーク中の通常の出社日まで延期できると解説されています。

更に、この通常の出社日が顧問税理士の予定と合わなければ、再度税務調査の延期が可能になるとされています。

別途出社日を設ける必要がないとなると、更に都合がいいことがあります。

それは、数日連続しての税務調査の実施が難しくなるということです。

連続せずにスパンが開けばあくほど、税務調査は甘くならざるをえないため、国税にとって苦しい状況になります。

ところで、税務調査を早く終わらせようという税理士は多いですが、本当に効果がある税務調査対応は、税務調査を長期化させることです。

国税調査官は1件の税務調査にあまり時間を掛けることができないため効果的なのですが、長引かせるには口実が必要です。

この口実として、テレワークの導入が絶好の言い訳になります。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、国策としてテレワークが奨励されていますから、その言い訳を国税も受け入れざるを得ず、ますます税務調査はやりづらくなります。

このような事情を踏まえると、国税も本来はリモートの税務調査を導入する、といった新しい対応策を取るべきです。

しかしながら、リモートの税務調査を国税は導入する予定はないようです。

この理由として、毎度の守秘義務の問題を指摘しているようですが、それはもちろん建前に過ぎません。

本音は、失言を記録されるのが嫌だからです。

結果として、今後も従来と同様、対面を前提とした税務調査が継続されるようですが、そうなるとますます税務調査は甘くならざるを得ません。

何より、感染が拡大する恐れがついて回りますから、変異株が出る度、十分な調査ができないことになるでしょう。

新しい生活様式、などと言われ企業も個人も時代に即した変化をしていく中で、税務調査だけは従来通り、といった甘ったれた考え方では、適正公平な課税の実現という税務調査の目的を果たすことは到底無理と言わざるを得ません。

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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?

元国税調査官・税理士・松嶋洋元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋

昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。
現在は税理士の税理士として、全国の税理士の税務調査や税務相談に従事しているほか、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキストは数多くの税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という500回を超える税務調査に関するコラムを連載中。

参考サイト

著書

 

引用元:「取り敢えずの期限内申告」と税理士法違反(2) |セブンセンスグループ

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