このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は2023年4月27日、5月9日、13日のコメント
- 被相続人の同族会社貸付金の評価
- 給与外注費のもうひとつの問題
- 土地建物一括取得の区分方法
の3件をご紹介します。
被相続人の同族会社貸付金の評価
被相続人が同族会社に対して貸付金がある状態で相続が発生した場合、貸付金はどう評価額すべきなのでしょうか。
週刊T&Amaster(2023年4月17日・No.975)では、平均利益や清算価値から計算した回収可能額を実質的な回収額としましたが、この評価方法は、国税や審判所から認められなかったと伝えられています。
これに対して松嶋先生は、国税や審判所が、債務者からの回収見込みがないことが客観的に明らかでなければ額面評価だと言っているのに、貸付金を0円で評価している方もいて信じられないと、驚きをあらわにします。
価値がない相続財産に相続税を支払いたくないという気持ちはわかるのですが、同族会社の貸付金評価の回収不能の客観性をクリアするのは極めてハードルが高いため、早期返済など別の方法を模索することに力を注いだほうが良いでしょう。
給与外注費のもうひとつの問題
給与と外注費については、仕入税額控除がよく問題になります。今回は、これとは別の視点で、給与と外注費の区分で問題となるケースが紹介されています。
税経通信2023年4月号では、給与外注の問題では、仕入税額控除の否認よりも給与課税のほうが怖いと伝えています。なぜなら、回収が困難になるケースがあるからです。
これに対して松嶋先生は、給与課税に備えて、追徴された源泉所得税を後日回収できるような体制を作っておくべきとしながら、その難しさについても言及します。
フリーランスに外注費を支払っている企業は、請負契約書等の整備やインボイスを発行してもらうなど、対策が求められそうです。
土地建物一括取得の区分方法
土地と建物の一括取得についての話題です。
週刊税務通信No.3751(2023年05月08日)によると、土地と建物の金額の区分は、契約書を問わず、不合理なら時価で按分するのが妥当と判断されたと伝えられています。
これに対して松嶋先生は、たとえ契約書に書いてあっても不合理な金額は危険なので、固定資産税評価額の按分を前提としつつ、違う割合を採用する場合は理由付けが必要になると警鐘を鳴らしています。
契約書に書いてあるからと言って、そのまま原価として使用すると否認される可能性がありそうです。仮に、契約書の区分が不合理な設定に思える場合は、固定資産税評価額で按分計算し直すと安心ですね。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
参考サイト
著書
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)