みなさん、こんにちは。編集長の手塚です。
先日、弥生株式会社(以下、弥生さん)からリリースがありました通り、3月末にてこれまで15年間、代表を務められた岡本浩一郎氏が退任され顧問となられ、4月1日より新社長として前山貴弘氏が就任されました。
弥生さんは、皆さまご存知の通り、当サイトのオフィシャルパートナーとしてスポンサードいただいておるのですが、去る4月5日に我々メディア向けに新体制の発表と懇親を兼ねたミーティングを開催されましたので、今回はそれについてお届けしたいと思います。
弥生さんのイベントレポートと言えば、普段は下記の記事↓のような形で、イベントの初めから終わりをしっかりレポートさせていただいています。
しかし、今回は、イベントの詳細は他のメディアさんでも出されていること、また、普段お世話になっている弥生さんや岡本前代表への想いもたくさんあることから、私、編集長の手塚が個人的な想いも含めて本件について書かせていただければと思います。
新社長の前山氏はPwC税理士法人からキャリアを始めた公認会計士
まず、4月1日より新たに社長となられた前山貴弘氏(以下、前山さん)についてです。
こちらが前山さんのご経歴です。
代表取締役 社長執行役員 前山 貴弘 (1977年9月9日生)2001年10月 プライスウォーターハウスクーパース入社(現 PwC税理士法人)2005年4月 公認会計士 登録2005年9月 前山公認会計士事務所 開所 代表社員2005年9月 シネマ・インヴェストメント株式会社 入社2007年1月 弥生株式会社 入社 内部監査室 社長付(2011年3月 退社)2011年6月 税理士 登録2017年1月 アンカー・ジャパン株式会社 入社2018年7月 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社 入社2020年6月 弥生株式会社 入社 執行役員 兼 管理本部長2020年10月 同社 取締役 執行役員2023年4月 同社 代表取締役 社長執行役員
前山さんは、公認会計士ですが、監査法人ではなく、PwC税理士法人からキャリアをスタートされています。
その後、2007年に弥生さんに入社され、2011年に一度、退社されています(ご本人曰く「海外で働くためだった」とのこと)。その後、外資系企業やBIG4監査法人系のFAS会社で勤務され、退職後も定期的に会っていた岡本社長(当時)から、「そろそろ戻ってきたら?」と誘われたこともきっかけのひとつとして、2020年に再び弥生さんへ入社。そして、この度、社長へと就任されておられます。
公認会計士として見ても、税理士として見てもとてもめずらしいご経歴ですね。
また、当日のイベントは、前山さんと岡本前社長のトークセッションから始まりましたが、岡本前社長からも「前山さんのことを嫌いな人はいないと思う」と紹介されるほど、皆さんから好かれるタイプとのこと。
そして、ご実家は会計事務所とのことで、弥生製品には昔から親しみがあり、今回のイベントでも「会計ソフトはもちろん、業務ソフトが大好き」と発言されるなど、さすが弥生の社長という感じです。
私も職業柄、これまで多数の公認会計士や税理士の方々とお会いしていますが、「世の中には、まだまだ私の知らないユニークなご経歴の公認会計士さんがおられるな」と、イベントの後の懇親会でご挨拶させていただくのを楽しみに、セッションを聞いていました。
そして、約1時間に及ぶイベントが終わり、いよいよ懇親会です。
懇親会では、参加しているメディア各社と弥生のみなさんとの交流の時間が設けられます。
私の今日の大事なミッションのひとつは、新社長である前山さんへご挨拶することですので、まずは前山さんとの名刺交換への列に並ばせていただきました。
しばらく順番待ちをした後、いよいよ私の番がまわってきました。
弥生さんは当メディアの大切なオフィシャルパートナー様ですので、失礼のないようにご挨拶しなければなりません。
私「ワイズアライアンスの手塚と申します。公認会計士や税理士の方向けのメディアをやっております。よろしくお願いします!」
前山さん「あ、手塚さん、以前お会いさせて頂きましたよね」
私「!?」
前山さん「ほら、昔、日本橋で、●●社の●●さんたちと飲んだときに」
私「!?!?!?」
前山さんから、開口一番、予想だにしない言葉が発せられ、私の頭は一瞬フリーズ…、そして、すぐ我に返り、フル回転で記憶を辿りました。
そうです、すっかり忘れていたのです。以前、お会いしたことがあったことを(汗
弥生さんは当メディアの大切なオフィシャルパートナー様ですので、失礼のないようご挨拶しなければなりません。
数行前の私のセリフ↑がブーメランとして返ってきました。(会ったこと忘れるとか、失礼にも程がある…)
言い訳をすると、以前にお会いしたのは約10年前の2013年の冬で、当時、私が前山氏からいただいた名刺は弥生さんのものではなかったこと(確か弥生におられた等のご経歴の話もしなかったはず…)、また、SNSでも繋がってなかったのですっかり忘れてしまっていました…。
ちなみに、今回のイベントを終えてから、「そういえば、飲み会の後にお礼のメールをくださっていた気が…」と思い調べてみたところ…
ありました!
とんだ大失態からのスタートですが、意外なご縁もあり、また、イベントにて実際の前山さんのお人柄に触れ、今後がより楽しみとなりました。
遠くないうちに前山社長のインタビューも当メディアでお届けできればと思っていますので、ぜひご期待ください。
伝えておきたい、私が感じていた岡本前社長の凄さ
そして、今回のもうひとりの主役でもある岡本前社長(以下、岡本さん)についてもお伝えさせてください。
岡本さんのご経歴はこちら。
岡本 浩一郎(おかもと こういちろう)
1969年、神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、野村総合研究所に入社。約7年に渡りエンジニアとして大企業向けシステムの開発・構築に携わった。その間、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のアンダーソンスクールに留学、MBAを取得。1998年、ボストン コンサルティング グループへ転職し、多様な企業のコンサルティングに携わった後、2000年に起業。設立したリアルソリューションズを通じてコンサルティング事業を展開。2008年4月より現職。弥生ブランドの強化と実績の再成長とを実現している。
今回、3月末でご退任され、顧問となられた岡本さんですが、私が初めてお会いしたのは約8年前になります。
当時、私は、クラウド請求書管理サービスMisoca(ミソカ)のアドバイザーを務めており、その関連のミーティングで初めてお会いさせていただきました。
ご存じの方もおられるかと思いますが、その後、Misocaは縁あって、M&Aで弥生さんの傘下に入ります。
弥生さんによるMisocaの買収後、私はアドバイザーは退任しましたが、当メディアの取材を通じて、年数回のペースで岡本さんとお会いする機会を持たせていただいておりました。
弥生PAPカンファレンスやメディア向けの事業報告会でのプレゼンテーションを聞かせていただいたり、時に直接のインタビューなどでお話を伺ってきましたが、「会計・業務ソフト」「法令」「会計事務所業界」「テクノロジー」などの動向を、包括的に捉えて分析した岡本さんのご意見は、いつもとても論理的で、かつ、現実的で腹落ちするものでした。
例えば、会計ソフトのクラウド化が進み始めた際には、クラウド後のビジョンを投げかけるだけではなく、会計事務所や経理の実情を踏まえた上で、「紙とデジタルが共存する過渡期があるだろう」「その過渡期では、会計業務はこうなっていく可能性がある」「弥生としては、そういった考えから、まずはこういったソリューションを提供していく」と、クラウド会計ソフトに関連して語られがちないつ来るかわからないデジタル一辺倒の未来像だけでなく、現状や過渡期もしっかりと踏まえた現実的な未来へのビジョンを提示してくれました。
また、数年前の年末調整の制度変更や、今まさに会計事務所業界の皆様が直面しているインボイス制度や改正電帳法などの法令改正に関しても、実際に足を運んでリサーチしてきた海外の徴税制度やインボイス制度の情報提供から始まり、電子インボイスの国際規格であるPeppol(ペポル)、会計実務への影響、行政側の意向など、難解な話題が幾重にも積み重なる大きなテーマをひとつひとつ丁寧に紐解き、「今回の法令改正の根幹には何があるのか」「どういった未来につながっていくのか」「会計事務所はこれらにどう向き合うべきなのか」、そして、「それらに対して弥生はどう取り組んでいくのか」を明示してくださいました。
AIやクラウド、インボイス制度など、会計事務所業界の前に次々と現れる新たなバズワードに翻弄される私たち会計業界人に対して、綿密な情報収集と検討にもとづいて、論点を整理し、今、起こっていること、数年後(短期)の現実的な未来、そして、中長期で訪れるであろう未来の会計業界の姿を見せてくれる人、それが岡本さんでした。
経営者としての絶妙なバランス感とパワー
また、私は、岡本さんの経営者としての凄さも感じていました。
「弥生の代表」というのは、世間の方々が想像する以上に高いバランス感を必要とされる難しいポジションだと認識しています。
お客様を見れば、経理担当者や税理士、公認会計士といった会計を本業とする方々のみならず、小規模法人の経営者や個人事業者といった、いわゆる会計が専門でない方々もおられます。
会計ソフトのシェアにおいては、業界ではトップではありますが、freeeやマネーフォワードといった強力な新勢力に立ち向かい、日々進歩する新しいテクノロジーにもキャッチアップしていかなければなりません。
また難しいのが、必ずしもテクノロジーに明るくないたくさんの古くからのお客様、ベテランの税理士の方々なども多数顧客として抱えておられますので、ただ単に新しいテクノロジーに振り切れるわけでもありません。
さらには、弥生さんの株主は岡本さんが舵をとられた15年の間、MBKパートナーズ→オリックス→KKRと常にプロの投資家が務めています。PEファンドやオリックスのような投資・M&Aに手練た株主のもとで経営者を務めることには、私たちの想像を超えるプレッシャーがあったと思います。
そして、これらと同時に、大切な従業員のみなさんのことも考えなければなりません。
当社も弥生さんの様々な部署の方々とお付き合いがありますが、従業員の方々とお話していて感じるのが、みなさんとても良い人たちであり、弥生のことも大好きで、お客様のことも本当に大好きで、楽しそうに働いておられるということです。
強力なライバルたちの追い上げをかわしながらトップシェアを維持し、さらには自身の業績も伸ばし、株主に対して業績で応えていかなければならない環境において、こういった従業員のみなさんが活き活きと働く、お客様想いの社風を維持しているのも、岡本さんの経営者としての手腕やお人柄の為せる技であったかと思います。
デスクトップとクラウド、デジタルとアナログ、ITに強いお客様とそうではないお客様、株主と従業員、その他にも、トップシェアゆえのイノベーションのジレンマ、30年の社歴があるからこその社内事情など、きっと私たちからは見えない大変なことが他にもたくさんあったと思います。
そういった様々なものの間で、バランスをとるだけでも簡単なことではありませんし、バランスを優先して、歩みが遅れては意味がありません。
弥生さんとお付き合いさせていただく中で、「絶妙なバランスを取りながら、一方で、バランスを取るために歩みを遅らせることなく、現在出せる最高速度のその少し上のスピードで組織を進めていく岡本さんの姿」に、私はいつも凄さと尊敬の念を感じ、たくさんのことを学ばせていただいておりました。
そして、今後の岡本さんですが、当面は顧問として弥生経営陣のサポートや、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)の活動に関与されるとのこと。
顧問である期間は「ひとまずは、半年を目安に考えていく」と、次は決まっておられないとのことですが、さすが生粋のエンジニアらしくAI(人工知能)について、じっくり勉強をしたいと考えておられるとのことです。
岡本さん、15年間本当にお疲れさまでした。また、たくさんのことを学ばせていただき本当にありがとうございました。岡本さんの退任には、率直なところ、寂しさも多分にありますが、またどこかでお仕事などご一緒できるのを楽しみにしております。
そして、前山さん、まさか10年前にお酒をご一緒させていただいた時には、こういった形で再会するとは思ってもおりませんでした(そもそも忘れてしまっていてすいません!)。前山さんが率いられる新たな弥生さんも楽しみにしております。
当社も引き続き弥生さんと共に会計業界を盛り上げていければと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。
2023年4月
株式会社ワイズアライアンス
代表取締役CEO
手塚佳彦