本日、令和4年度(2022年度/第72回)税理士試験の結果が発表されました。
合格された皆様、おめでとうございます。
また、惜しくも合格とはならなかった皆様、来年は良い結果をつかめますよう祈念しております。
さて、今年の税理士試験の結果に関する考察をお届けします。
例年、12月の第2~3金曜日での合格発表が通例であった合格発表ですが、本年は11月最終日・水曜の発表となりました。(なお、令和5年度・第73回の税理士試験のスケジュールでも合格発表日は11月30日となっていますので、今後は11月末の発表となるのかもしれません。)
それでは、本年の合格発表を考察していきます。
今年の税理士試験合格発表のポイントは以下です。
令和4年度・第72回 税理士試験合格発表のポイント
- 合格者の総数(実人数)は前年比487名の増加
- 合格者数、合格率ともに増加
- 30歳以下の官報合格者数は120名と前年比5名の増加
受験者・合格者数と合格率
合格者は5,626名、昨年から487名の増加
本年の税理士試験の受験者・合格者数と合格率は以下のようになっています。
令和4年度・第72回 税理士試験合格発表の概要
- 受験者数:28,853名(延べ40,430名)
- 合格者数合計(実人数):5,626名(官報合格者数:620名、一部科目合格者数:5,006名)
- 合格率:19.5%
本年の合格者(一部科目合格者含む)は5,626名であり、昨年の5,139名から487名の増加となりました。また、合格率も昨年の18.8%から19.5%へと上回る結果となりました。
税理士試験の合格者数は、受験者数の現状と相まって、合格者数も減少傾向にありましたが、ここ数年は横ばいとなっています。受験者数も合格者数もひとまず底を打ったと考えて良いかもしれません。
【令和4年度(第72回)税理士試験の受験者数・合格者数と推移】
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合格率に関しては、多少の変動はありつつも、中期的には15~20%の間で推移しており、本年も19.5%と例年の枠内に収まる結果となりました。
【令和4年度(第72回)税理士試験の合格率と推移】
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官報合格者の数は、数年ごとに増減を繰り返してきていますが、本年は620名と昨年に比べて35名の増加となりました。中長期では減少傾向にある合格者数ですが、本年は増加したことで来年以降も増加となるか気になるところです。
【令和4年度(第72回)税理士試験の官報合格者数と推移】
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男女別の合格者数
女性の合格者比率は30.1%
合格者の性別は以下のとおりです。
合格者に女性が占める割合は30.1%となっており、一昨年の28.6%、昨年の29.0%よりさらに上昇、合格者全体のほぼ3割が女性となっています。女性の合格者比率が30%を超えるのは平成21年度以来、13年ぶりとなります。
税理士試験の合格者総数が大きく増えていないことから、女性の合格者数も大きくは増えてはいませんが、女性比率が高まっていることは、業界全体にとってもプラスになると言えるでしょう。
令和4年度・第72回 税理士試験合格者の男女比
- 合格者合計:5,626名(男性:3,935名、女性:1,691名)…女性比率30.1%
- 官報合格者:620名(男性:433名、女性:187名)..女性比率30.2%
- 一部科目合格者:5,006名(男性:3,502名、女性:1,504名)..女性比率30.0%
【令和4年度(第72回)税理士試験合格者に占める女性人数・比率と推移】
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昨今は、女性の活躍推進や産休・育休などの整備、リモートワークなどによって女性が働きやすい環境の整備が世の中全体で進んでおり、税理士業界でも、人材不足の影響やクラウド化の進展も後押しとなり、同様の傾向が見られます。
今後、仕事と家庭の両立が行いやすい環境がさらに整備されていくことによって、女性の受験者数、ひいては、受験者数全体にも影響が出てくるのではないかと予想されます。
年齢別の合格者数
30歳以下の官報合格者はわずか120名!
年齢別の合格者数は以下のとおりです。例年通り若い年齢ほど合格率が高くなっています。
一方で、30歳以下の官報合格者は120名と、例年通り若手官報合格者が少ない状況であり、昨年の115名からわずかに増加しました。
この官報合格者120名という数字は、47都道府県で平均すると1都道府県当たり約2.6名という人数になり、若手税理士の希少価値の高さがわかる数字ともなっています。
【令和4年度(第72回)税理士試験の年齢別合格者数・合格率】
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また、30歳以下の官報合格者数は以下のグラフの通り、年々減少傾向にありますので、高齢化の進む税理士業界において、若手税理士の供給が少ないことは大きな課題と言えるでしょう。
【30歳以下の官報合格者数の推移】
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科目別の受験者数・合格者数・合格率
合格率最高は簿記論の23.0%、最低は消費税法の11.4%
科目別の受験者数・合格者数・合格率は以下のとおりです。
本年の科目で、最も合格率が高かったのは簿記論の23.0%でした。逆に、合格者数が最も少なかったのは事業税の38名、合格率が最低だったのは消費税法の11.4%でした。
全体の合格率は、一昨年から昨年にかけて17.3%→16.5%と減少していましたが、本年は昨年より0.2%アップし16.7%となっています。
本年は簿記論の合格率がやや高かったものの、全体としては大きな波乱のない合格率だったと言えるでしょう。
また、初学者が受験する簿記論の合格率が高かったことで、今後、税理士試験の受験を継続する人も多いかもしれません。
【令和4年度(第72回)税理士試験の科目別受験者・合格者数・合格率】
※合格者数・受験者数は複数科目受験者・合格者を含む延べ人数。
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来年は受験資格変更で受験者が増えるか!?税理士や会計事務所経験者への採用ニーズも好調
2022年は、インフレやロシアのウクライナ侵攻など市況の変化も多い1年でしたが、会計事務所業界では引き続き人材不足が続いており、税理士や会計事務所経験者にとっては、就職・転職が有利な状況が続いております。
そのため、本年の合格者の皆様にとっても、就職・転職活動は引き続き行いやすいものになると予想されます。
また、来年(第73回・令和5年度)の税理士試験からは、受験資格が緩和され、より多くの方が税理士試験を受験しやすくなります。一時期と比較して低調な税理士試験の受験者数ですが、これにて大きく回復するのでしょうか!?
本年の合格者の皆様の今後のキャリアがより良いものになることを祈念しております。
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※参考:本記事は令和4年度(第72回)税理士試験結果(国税庁)をもとに作成致しました。