2022年2月の税理士業界ニュースをお届けします。
「前勤務先から顧客情報持ち出して独立した税理士らが逮捕」「会計士関与の社福売買で広島国税局が20億円の申告漏れ指摘」「法改正で令和5年4月から税理士廃業後も懲戒処分」の3本です。
前勤務先から顧客情報持ち出して独立した税理士らが逮捕
前勤務先の会計事務所から顧客情報を持ち出し独立した税理士が逮捕されるという事件が起きてしまいました。
今回、京都市の税理士事務所で起きた事件に関する記事を、毎日新聞がリリースしています。
元勤務先の税理士事務所から顧客のマイナンバーを含む営業情報を不正に持ち出したとして、京都府警は19日、「からすま中央税理士事務所」(京都市下京区)代表の税理士、●●●●*容疑者(39)=*●●●●=と同事務所アルバイト、●●●●*容疑者(33)=*●●●●=を、不正競争防止法違反(営業秘密の領得)とマイナンバー法違反(個人番号の取得)の両容疑で逮捕した。府警は顧客を奪う目的だったとみている。
*●●●●の部分は元記事では実名住所公開されていますが、本記事では伏せさせて頂きます。
引用元:顧客のマイナンバー、元勤務先から持ち出した疑い 税理士ら逮捕(毎日新聞 2022年1月19日付)
記事では、容疑者の2人は、前勤務先の会計事務所から、顧客2社の財務情報と社員10人分のマイナンバーなどを持ち出した直後に退職し、現在の事務所を設立したと伝えられています。前勤務先の会計事務所にて顧客の解約が相次いだため社内調査を実施したところ、パソコンから情報が持ち出された形跡が見つかったということです。
税理士が独立する際には、1社でも多くの顧客が欲しいのが心情かと思いますが、顧客や営業情報などの持ち出しは不正競争防止法に抵触します。税理士として、業務や顧客、過去の勤務先に対して誠実に向き合うことを改めて考えさせられる事件です。
詳細は以下の記事をご参照ください。
会計士関与の社福売買で広島国税局が20億円の申告漏れ指摘
社会福祉法人の売買代金を別法人の出資金として受け取った場合は、個人の所得なのでしょうか?それとも法人の所得なのでしょうか?社会福祉法人からの資金流出事件が、民事再生、20億円の申告漏れへと発展、また、本件には公認会計士の関与も指摘されています。
今回、社会福祉法人「サンフェニックス」に関する記事が、讀賣新聞オンラインよりリリースされています。
社会福祉法人「サンフェニックス」(広島県福山市、民事再生手続き中)の資金流出問題で、設立者の男性医師(72)が2016年に経営権を事実上売買した際の所得を申告しなかったとして、広島国税局から20億円の申告漏れを指摘されていたことが関係者の話でわかった
引用元:資金流出の社福、経営権売買時の20億円は設立者の「所得」と認定(讀賣新聞オンライン 2022年1月25日付)
記事によると、サンフェニックス元理事の医師は、2016年3月、経営権を東京都内の男性公認会計士に売却し、代金42億円のうち20億円は出資の方法で受け取ったということです。広島国税局は、当該出資金は医師に支払われた個人所得にあたると認定し、申告漏れを指摘したとみられています。
サンフェニックスの民事再生に伴い、関係会社のМ.K.C.associatesをはじめとした連鎖倒産が起きています。事件はどこまで広がりを見せるのでしょうか。
詳細は以下の記事をご参照ください。
法改正で令和5年4月から税理士廃業後も懲戒処分
廃業して処分を逃れようとする税理士が相次ぎ、税理士法の改正が待たれていました。
今回、税理士法改正に関する記事を、日本経済新聞がリリースしています。
政府は脱税など不正に関わった税理士が廃業したあとも国税庁が調査して懲戒処分できる制度を新たに設ける。
引用元:不正行為の税理士、懲戒逃れを防止 税理士法を改正へ(日本経済新聞 2022年1月31日付)
記事では、2023年4月以降から、廃業した税理士も調査の対象となり、現役税理士と事実上同じ処分ができるようになると伝えられています。処分内容として、業務の停止や禁止のほか、氏名や不正の概要も公表されるということです。
令和4年度税制改正の大綱で、税理士制度の見直しについて触れられています。
制度の不備を悪用した事件が跡を絶たず、もっと早く制度改正ができなかったのかという気がしてなりません。
詳細は以下の記事をご参照ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)