本日、令和3年度(2021年度/第71回)税理士試験の結果が発表されました。
合格された皆様、おめでとうございます。
また、惜しくも合格とはならなかった皆様、来年は良い結果をつかめますよう祈念しております。
さて、今年の税理士試験の結果に関する考察をお届けします。
今年の税理士試験合格発表のポイントは以下です。
令和3年度・第71回 税理士試験合格発表のポイント
- 合格者の総数(実人数)は前年比263名の減少
- 合格者数、合格率ともに減少
- 30歳以下の官報合格者数は115名と2年連続の減少
受験者・合格者数と合格率
合格者は5,139名、昨年から263名の減少
本年の税理士試験の受験者・合格者数と合格率は以下のようになっています。
令和3年度・第71回 税理士試験合格発表の概要
- 受験者数:27,299名(延べ37,673名)
- 合格者数合計(実人数):5,139名(官報合格者数:585名、一部科目合格者数:4,554名)
- 合格率:18.8%
本年の合格者(一部科目合格者含む)は5,139名であり、昨年の5,402名から263名の減少となりました。また、合格率も昨年の20.3%から18.8%へと下回る結果となりました。
税理士試験は、平成29年度(2017年度)の税理士試験で財務諸表論が合格率29.6%という異常値となった例外の年を除けば、減少傾向にありましたが、一昨年と昨年の2年連続で合格者数が増加していました。しかしながら、本年は受験者数が増加したにも関わらず、合格者数は減少する結果となりました。
【令和3年度(第71回)税理士試験の受験者数・合格者数と推移】
※クリックするとグラフが拡大します。
合格率に関しては、多少の変動はありつつも、中期的には15~20%の間で推移しており、本年も18.8%と例年の枠内に収まる結果となりました。
【令和3年度(第71回)税理士試験の合格率と推移】
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官報合格者の数は、数年ごとに増減を繰り返してきていますが、本年は585名と昨年に続いての減少となり、引き続き中期での減少傾向が止まらない状況となっています。
【令和3年度(第71回)税理士試験の官報合格者数と推移】
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男女別の合格者数
女性の合格者比率は29.0%
合格者の性別は以下のとおりです。
合格者に女性が占める割合は29.0%となっており、一昨年の27.9%、昨年の28.6%よりさらに上昇、合格者全体のほぼ3割が女性となっています。
税理士試験の合格者総数が大きく増えていないことから、女性の合格者数も大きくは増えてはいませんが、女性比率が高まっていることは、業界全体にとってもプラスになると言えるでしょう。
令和3年度・第71回 税理士試験合格者の男女比
- 合格者合計:5,139名(男性:3,649名、女性:1,490名)…女性比率29.0%
- 官報合格者:585名(男性:434名、女性:151名)..女性比率25.8%
- 一部科目合格者:4,554名(男性:3,215名、女性:1,339名)..女性比率29.4%
【令和3年度(第71回)税理士試験合格者に占める女性人数・比率と推移】
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昨今の税理士業界では、人材不足の影響もあり、女性が働きやすい環境を整える会計事務所が以前よりも多く見られつつありましたが、コロナ禍に伴うリモートワークで、家庭と仕事の両立や、そういった人材の勤務環境への意識も業界全体でさらに変わりつつあると思われます。
今後、仕事と家庭の両立が行いやすい環境がさらに整備されていくかどうかが、女性の受験者数、ひいては、受験者数全体にも影響が出てくるのではないでしょうか。
年齢別の合格者数
30歳以下の官報合格者はわずか115名!
年齢別の合格者数は以下のとおりです。例年通り若い年齢ほど合格率が高くなっています。
一方で、30歳以下の官報合格者は115名と、例年通り若手官報合格者が少ない状況であり、一昨年の175名への増加から一転、2年連続での再び減少となりました。
この官報合格者115名という数字は、47都道府県で平均すると1都道府県当たり約2.4名という人数になり、若手税理士の希少価値の高さがわかる数字ともなっています。
【令和3年度(第71回)税理士試験の年齢別合格者数・合格率】
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また、30歳以下の官報合格者数は以下のグラフの通り、年々減少傾向にありますので、高齢化の進む税理士業界において、若手税理士の供給が少ないことは大きな課題と言えるでしょう。
【30歳以下の官報合格者数の推移】
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科目別の受験者数・合格者数・合格率
合格率最高は財務諸表論の23.9%、最低は消費税法の11.9%
科目別の受験者数・合格者数・合格率は以下のとおりです。
例年の傾向通り、簿記論と財務諸表論の合格者数や合格率が高い傾向にあり、最も合格率が高かったのは財務諸表論の23.9%でした。逆に、合格者数が最も少なかったのは事業税の38名、合格率が最低だったのは消費税法の11.9%でした。
全体の合格率は、一昨年から昨年にかけて15.5%→17.3%と増加していましたが、本年は昨年よりも0.8%ダウンし16.5%となっています。
本年は財務諸表論の合格率がやや高かったものの、全体としては大きな波乱のない合格率だったと言えるでしょう。
【令和3年度(第71回)税理士試験の科目別受験者・合格者数・合格率】
※合格者数・受験者数は複数科目受験者・合格者を含む延べ人数。
※クリックすると表が拡大します。
コロナ禍2年目も衰えなかった税理士や会計事務所経験者への採用ニーズ
2020年以降のコロナ禍により、世の中の状況も大きく変わることとなりましたが、2021年も会計事務所業界では引き続き人材不足が続いており、税理士や会計事務所経験者にとっては、就職・転職が有利な状況が続いております。
そのため、本年の合格者の皆様にとっても、就職・転職活動は引き続き行いやすいものになると予想されます。
また、来年(第72回・令和4年度)の税理士試験は、実施時期は例年通りであるものの、合格発表の予定日が11月30日と例年より早まっています。早めに結果を知ることができる点は、その後のスケジュールやキャリアを考えるに当たってプラスになるのではないでしょうか。
本年の合格者の皆様の今後のキャリアがより良いものになることを祈念しております。
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※参考:本記事は令和3年度(第71回)税理士試験結果(国税庁)をもとに作成致しました。