2021年10月22日、弥生株式会社よりデスクトップアプリ「弥生 22 シリーズ」が発売となりました。
本記事では、去る2021年10月14日に東京・秋葉原 UDX及びウェビナーにて、メディア向けに開催された、弥生 22 シリーズ発表および事業概況説明会のレポートをお届けします。
※記事内のスライドはすべて弥生 22シリーズ製品発表会資料からの引用です。
本記事の目次
- 弥生株式会社の現状
- 弥生 22シリーズのアップデートポイントは?
- 記帳代行支援サービス利用者が550事務所突破
- 業務支援のみならず「事業コンシェルジュ」へ
- インボイス制度・電子帳簿保存法改正への取組み
弥生株式会社の現状
弥生シリーズが34年目を迎える弥生株式会社。代表取締役社長の岡本浩一郎氏がまずは弥生シリーズの現状を振り返りました。
*弥生株式会社は9月決算。
「登録ユーザー数」「弥生PAP会員数」「売上高」の状況はそれぞれ以下の通り、順調に推移し、弥生シリーズの好調さを示す数字となっています。
登録ユーザー数は253万を突破
弥生シリーズの登録ユーザーは253万を突破し、さらに順調に拡大中です。
デスクトップ、クラウドの両方で圧倒的シェアNo.1を実現し、登録ユーザー数を拡大しています。
弥生PAP会員数は11,000事務所を突破
弥生シリーズの販売パートナーでもある弥生PAP(やよいぱっぷ)の会員は11,000事務所を突破。会計事務所のパートナーネットワークとして日本最大規模を誇っています。
売上高も過去最高を記録
登録ユーザー数、弥生PAP会員数の増加とともに、売上高も過去最高を継続。法令改正の対応と、AIによる推論精度を向上させてスマート取引取込の機能強化をはかり、前年を上回る結果となりました。
弥生 22 シリーズのアップデートポイントは?
続いて、2021年10月22日にリリースしたデスクトップアプリ「弥生 22 シリーズ」についての発表が行われました。
弥生 22 シリーズは、「やよいの青色申告 22」「弥生会計 22」「やよいの給与計算 22」「弥生給与 22」「やよいの見積・納品・請求書 22」「弥生販売 22」「やよいの顧客管理 22」の7製品が対象となっています。
弥生シリーズの主な強化ポイント
弥生22シリーズでは、SMART(自動取込自動仕訳)の推進強化や、会計事務所の業務効率化に役立つ対応が盛り込まれています。
SMART(自動取込自動仕訳)の推論強化
従来は4段階の推論ロジックで勘定科目を特定していましたが、3段目の推論ロジックを、従来のベイズ推定からニューラルネットワークに進化させたことで、勘定科目の推論が最適化される独自技術を開発しました。
国税庁提供の年調ソフトとの連携
従業員が国税庁のソフトを使って年末調整控除申告書を作成した場合に、そのデータを、弥生給与とデータ連携するツールが、新たに追加されました。
記帳代行支援サービス利用者が550事務所突破
会計事務所に向けて、記帳代行支援サービスを提供開始してから約1年たち、順調に利用。有償での利用事務所数は552事務所へと増加しています。
記帳代行支援サービスのマーケット規模と見通しについての記者からの質問に対し、岡本代表は、「PAP会員11,000を最大の母数として、今後電子インボイスの普及で紙の証憑が無くなっていくことも加味すると、数千事務所が上限ではないかと考えている。」と、見解を述べました。
なお、記帳代行支援サービスを導入した会計事務所の事例については、下記でも特集していますのでご参照ください。
業務支援のみならず「事業コンシェルジュ」へ
弥生株式会社は、従来は、会計ソフトの提供を軸に、会計を中心とした「業務」の支援をメインサービスとしてきましたが、今後は、「事業コンシェルジュ」をキーワードに、業務だけではなく「事業」に関する支援サービスも対応していくと、岡本代表からビジョンが語られました。
これに伴い、2021年3月より、起業から事業承継までトータルで支援する「事業支援サービス」が順次スタートしています。
事業支援サービスに関しては、現時点では下記4つを予定しており、2021年3月31日にリリースした「起業・開業支援ナビ」に続き、11月には「資金調達ナビ」を、その後、「税理士紹介ナビ」ならびに「事業承継ナビ」のリリースを予定しているとのことです。
インボイス制度・電子帳簿保存法改正への取組み
電子インボイス推進協議会(EIPA)の動向
発表会の後半では、2023年10月より始まる適格請求書(インボイス)等保存方式制度に関して、導入の課題や今後の対応について取り上げられました。
インボイス制度の導入には、中小企業を含むすべての事業者が共通して利用できるシステムの構築が必要という認識のもと、2020年7月に弥生株式会社が代表幹事となり、ITベンダーを中心とした電子インボイス推進協議会が設立されました。
そして、設立から約1年で電子インボイス推進協議会の会員数が飛躍的に増加していることについて、岡本代表は、「電子インボイスに対するITベンダーの危機感の現れだ」と認識を示しました。
岡本代表は、「現状の商取引は、企業内のシステム利用が進んでいるものの、いまだに紙の証憑が郵送でやり取りされおり、デジタル化が進んでいない」と問題点を指摘しました。そのうえで、法令(「適格請求書等保存方式」)対応だけではなく、デジタル化で圧倒的な業務効率化を目指すことが重要だと課題を示しました。
インボイス制度で事業者の業務効率化を同時に実現するためには、日本国内のすべての事業者が共通して利用できる、標準システムが必要となります。
電子インボイス推進協議会では、標準システムを日本独自でいちから構築するのではなく、ヨーロッパ発祥の国際規格であるPeppolをベースにすることが採択されています。
日本のインボイス制度や、日本特有の商取引に適合させる作業が進められる中、日本版Peppolのドラフト第1版が、2021年8月末にEIPA会員に公開されており、デジタル庁の確認を経て発表の予定です。今後は、2022年春に第2版のリリースも予定しており、仕入明細書にも対応が可能となります。
このように、Peppolをベースに、日本の電子インボイスの標準システムの構築が進められていますが、グローバルと日本の商習慣の違いから、日本ではそのまま採用ができない部分もあります。
グローバルでは都度請求書が一般的であるため、Peppolも都度請求書に対応した仕様となっています。一方、日本では合算請求書(月締請求書など)が商慣習となっており、Peppolを採用する場合、これに対応すべきかという論点が生じますが、日本版Peppolでは、「合算請求書に対応する」との方針となったと、岡本代表から説明がありました。
なお、Peppolや合算請求書(月締請求書)については、岡本代表がブログでも詳細に解説されていますのでご参考ください。
- ドラフト第一版(2021年8月27日)
- JP Peppol(2021年8月31日)
- 業務プロセスの整理(2021年9月2日)
- 合算請求書は何が違うのか(2021年9月14日)
- 月締請求書と月まとめ請求書(2021年9月16日)
- 何がインボイス(適格請求書)なのか(その1)(2021年9月21日)
- 何がインボイス(適格請求書)なのか(その2)(2021年9月24日)
- 日本もPeppolに参加(2021年9月28日)
電子帳簿保存法改正とベンダーロックイン問題
また、電子帳簿保存法は、デジタル化ではなく「電子化」であり、事業者への負担が大きい点、また、いったんシステムを使い始めると他社への切り替えができなくなるため、強烈なベンダーロックインの問題もはらんでいると、岡本代表は危機感をあらわにしました。
弥生株式会社が、インボイス制度の理解度について独自に行なったアンケート調査によると、インボイス制度を知らない人が半数近くなのに対して、内容を知っている人は全体の15%しかいないという結果になりました。
岡本代表はアンケート調査結果を元に、中小企業はほとんど準備ができていない状況だと現状を分析しました。
インボイス制度への弥生の対応
インボイス制度の認知度をあげるため、弥生株式会社は「インボイス制度あんしんガイド」を公開し、情報発信に取り組んでいます。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法改正への対応製品を、3段階に分けて順次リリース予定です。
その中核となる「証憑管理サービス」では、仕入先からの様々な帳票を一元的に管理できるようになります。構造化されたデータとして扱うことで、商取引システム、販売管理システム、会計システムが連動し、事業者の業務効率化を目指します。
岡本代表は、電子インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正が、単に行政手続効率化のみならず、小規模事業者にとっての業務効率化にもつながるように、ありとあらゆる業務をデータでつなげていけるような仕組みづくりをしていきたいと、今後の抱負を述べました。
以上、弥生新製品発表会のレポートをお届けしました。